タイプ7

熱中する人タイプのキャラを、これから形にする人へ

明るくて、楽しいことが大好きなキャラクター。
設定メモにはそう書いたのに、いざ動かしてみたら、ただ賑やかなだけの人になってしまった。
その手応えのなさに心当たりのある皆さんは、たぶん少なくないと思います。

私も同じところで何度も止まりました。
明るさというのは性格そのものではなく、結果として表に出てくる表面なんですよね……。
その下に「なぜ次へ行きたいのか」が1本通っていないと、キャラクターは笑っているだけの背景になります。

エニアグラムは、人を動かしている動機のほうから9つに分ける見方です。
そのタイプ7にあたるのが、今回の熱中する人タイプ。
定義の話はこのくらいにして、さっそくキャラクターの材料として見ていきます。

このタイプが次へ行くのは、飽きたからではありません。
留まると追いつかれるから、追いつかれる前に動く。
楽しいほうへ舵を切っているように見えて、実際には切らないと立っていられない、という順番です。

この一行を持っているだけで、賑やかなだけだったキャラクターに背骨が入ります。
笑っている場面ほど、後ろに何を置いてきたのかが効いてくる。
強みも弱点も、全部ここから枝分かれしていきます。

材料は多めに用意しました。
強み3つ・弱点2つ・職業3つ・シンボル5つ・場面3つ、それに転換点が3つ。
全部を使う必要はないので、刺さったものを2つ3つ持ち帰ってもらえれば十分です。

このタイプを映す言葉

「片雲の風にさそはれて、漂泊の思ひやまず」
——松尾芭蕉『おくのほそ道』

「私が旅をするのは、どこかへ行くためではない。ただ行くために旅をする。大事なのは動くことだ」
——ロバート・ルイス・スティーヴンソン『旅は驢馬をつれて』

どちらも、目的地の話をしていないところが似ています。
行き先ではなく、動いていること自体が目的になっている……この感じが、このタイプの手触りにいちばん近いと私は思っています。

一言で言うとこんなタイプ

痛みが追いつく前に、次の楽しいほうへ舵を切る人。
これがこのタイプの核です。

楽しさを追いかけているというより、止まった瞬間に届いてしまうものから距離を取り続けている、と考えるとしっくりきます。
だから足が速いんですね。

自分のキャラクターに当てはまるかを見るなら、「楽しいことが好きか」ではなく「止まりたくない理由があるか」で確かめてみてください。

熱中する人タイプの武器になる3つの特性

特性の名前だけを見ると、他のタイプにもありそうなものばかりです。
差が出るのは中身のほうなので、そこを厚めに書きます。

魅力1:発想力

ひとつ塞がると、代わりが3つ出てきます。
このタイプの発想力は、珍しい案をひらめく力というより、選択肢が増えていく速さのほうなんですよ。

道が閉じた瞬間に落ち込む時間がほとんどないのは、閉じる前からもう別の道が視界に入っているからです。
物語では、一行が行き詰まった場面で最初に口を開く役を任せると、この速さがそのまま画面に出ます。

魅力2:臨機応変

計画が崩れても、このタイプは損をしたと感じません。
崩れた地点を減点として数えず、そこを出発点として扱うんです。
だから、立て直すという発想自体があまり出てきません。

ほら、GMが敷いた道筋を全員で踏み外したのに、その回がいちばん盛り上がった、というセッションがありますよね。
あの空気を一人で作れる人だと考えると、書きやすくなると思います。

魅力3:自由への渇望

行きたい場所があるわけではありません。
閉じられること自体を認めていない、というほうが近いです。
翼をたたむ理由を、本人がひとつも用意していないんですよ。

この形で書くと、持ち物にも肩書きにも執着が薄くなります。
地位や褒美を差し出されて、悪びれずに断る場面が書きどころです。

熱中する人タイプが抱え込みやすいもの

葛藤1:飽きっぽさ

魅力1で書いた「代わりが3つ出てくる速さ」は、そのまま留まらない理由にもなります。
同じ根から、表と裏が生えているわけです。

ここで大事なのは、飽きたのではなく、追いつかれる前に移っているという順番のほうです。
何に追いつかれるのかを設定に一行だけ決めておくと、このタイプは急に書きやすくなります。
失った人でも、逃げてきた土地でも、言えなかった一言でもかまいません。

……ここまで読んで、書きかけのキャラクターの顔が浮かんだ人もいるかもしれません。
正直、この一行を決めないまま動かすと、ただ移動が多いだけの人物になります。
私も何度かそれをやりました。

葛藤2:衝動

考える前に、体がもう次の場所にいます。
逃げるという判断が、反射の速さで出てしまうんですね。
本人には、決断した記憶すら残っていません。

厄介なのは、悪気がまったくない点です。
置いていかれた側にだけ痛みが残り、当人は数日後にけろりと戻ってくる——ここが対立の起点になります。
物語では、この落差を目撃した仲間の視点から書くと、読者にも届きやすいです。

熱中する人タイプを形にする設定の素材集

物語で活躍させる職業アイデア

世界観のついた職業を3つ選びました。
どれも「同じものを二度作らなくていい」という条件が、仕事の側に最初から入っています。

適職1:祭具のからくり師

毎年ちがう仕掛けを考える仕事です。
去年と同じ出来のものを求められないので、ひとつ塞がっても代わりが3つ出てくる発想力が、そのまま職能になります。

物語では、祭りの当日に仕掛けが動かない、という事件で中心に立てられます。
直すのではなく、別の見世物に丸ごと差し替えてしまうところまで書くと、このタイプらしさが出ます。

適職2:まだ嗅いだことのない匂いを合成する調香師

完成した香りより、次の試作のほうが面白い人です。
閉じられることそのものへの拒否が、そのまま実験の量に化けていきます。

物語では、依頼された匂いを作らずに、まったく別の匂いを持ってくる場面が使えます。
依頼人が怒るか、それとも黙り込むかで、その世界の空気まで書き分けられます。

適職3:即興劇の座付き作家

台本が崩れた瞬間がいちばん強い書き手です。
計画の崩壊を損失と感じない臨機応変が、そのまま舞台の上の芸になります。

物語では、劇の途中で本物の事件が起きる場面に置くと効きます。
客席はまだ演目だと思っている、という状況を、一人だけ利用できるからです。

このタイプを象徴するもの

デザインや名前を決めるときの素材です。
5つ全部を1体に盛らず、1つか2つ選ぶくらいがちょうどいいと思います。

動物:獺

食べるためではなく、遊ぶために泳ぐ動物です。
気に入った石を持ち歩く習性があり、必要だから持っているわけではないところがよく似ています。

種族設定や仕草に落とすと使いやすいです。
役に立たない何かを、いつもふところに入れている。
それだけで人物が立ちます。

植物:楓の翼果

回りながら飛ぶ種です。
どこに着地するかを、種自身がまったく決めていません。

紋章や名前の由来に向いています。
「風任せ」と書くと軽く見えますが、回転しながら落ちていく姿はけっこう美しいので、衣装の意匠にも使えます。

人工物:万華鏡

覗くたびに絵が変わり、二度と同じ絵には戻らない道具です。
目的は中の絵ではなく、回すという動作そのもの。
このタイプの動機のかたちに、いちばん近い形をしています。

持ち物として渡すと、台詞のない場面で性格を説明してくれます。

色:茜色

夕方の空の赤です。
青みを含んだ深い赤で、ぱっと目を引く明るい赤ではありません。

衣装や瞳の色に使うと、明るいだけの人物には見えなくなります。
楽しげな性格に、少し暗い色を1つ混ぜておくのは、私はかなり有効だと思っています。

自然現象:雪解け水

緩んだ瞬間に走り出し、走り出したら止まらない水です。
ためらう時間がほとんどないところが、このタイプの動き出しに重なります。

異名や二つ名の素材として使えます。
止まらないという性質を、褒め言葉と悪口の両方に読める形で置けるのが便利です。

熱中する人タイプのキャラクターが輝く場面

足りない台所

旅の途中、宿の台所には半端な材料しか残っていません。
誰もが今夜は諦めた顔をしている中で、このタイプだけが棚を三度見返して、誰も思いつかなかった一皿を出します。

本人にとっては、献立を考えたのではありません。
並んでいる材料から、作れるものが勝手に3つ浮かんだだけです。
ひとつ塞がれば代わりが出てくる速さは、こういう小さい場面でこそ見えます。
その日いちばん笑ったのが誰だったかを、読者が覚えて帰る見せ場になります。

迷った道のほうが面白い

道を間違えました。
全員の顔がこわばる中で、このタイプは地図を畳んで、間違えたこと自体を笑い話にし始めます。

そのまま知らない道を選び、結果として一行を無事に連れ帰ってしまう。
崩れた地点を損失として数えていないから、崩れた場所からそのまま歩き出せるんですね。
迷ったという事実は消えませんが、この場面を通ったあと、一行の記憶では失敗が別のものに変わっています。

貸したまま、忘れる

自分の道具を、頼まれるより先に差し出します。
数か月経って返ってこないと気づいても、催促する様子がありません。

けちだからでも、寛大だからでもないんです。
持ち物に縛られることのほうを嫌っていて、貸したまま忘れられるくらいが本人には身軽で心地いい。
閉じられることを認めない性質は、こういう静かな場面にいちばんはっきり出ます。

熱中する人タイプの転機はどこで訪れるか

このタイプが対立しやすい相手

まず、噛み合う相手から。
挑戦する人タイプとは、どちらも遠慮しないという一点で通じます。
このタイプは身軽さで、挑戦する人タイプは正面から。

やり方はまるで違うのに、止められることを嫌う点だけが一致します。
組ませると勢いのある二人組になり、周りが振り回される側に回ります。

平和をもたらす人タイプとも、自然に成立する組み合わせです。
どちらも反応が速いのですが、その速さが自分のためと相手のために割れているんですよ。
このタイプが引っ張り、平和をもたらす人タイプが合わせる形に落ち着きます。

関係が長く続いたあとで、合わせ続けた側が何を飲み込んでいたのかを書くと、物語がひとつ動きます。

噛み合わないのは改革する人タイプです。
粗を数える人と、次の面白いほうへ舵を切る人。
同じ卓に着くと、互いの速度がまず耐えがたい。

正しさを詰める側から見れば雑に映り、動く側から見れば足を止められているだけに感じます。
どちらも相手を悪人だと思っていないのに、一晩一緒に過ごすと消耗する——この形の対立は、読者にも身に覚えがあるぶん効きます。

個性的な人タイプとは、痛みに留まる人と痛みから離れる人という違いで、このタイプの明るさが逃げに見え、相手の深さが重石に見えます。

プレッシャーを受けたときの行動パターン

余裕があるうちは、次の面白いほうへ舵を切れます。
ところが余裕を失うと、このタイプには別の顔が出ます。

粗を数える側に回るんです。
楽しいほうへ動けなくなり、代わりに他人の不備を細かく指摘し始めます。
身軽さが硬さに反転するので、この変化には本人がいちばん驚きます。

いつも笑っていた人物が急に細かくなる場面は、それだけで場の緊張が上がります。
まぁ、書き手としては使いどころの多い顔だと思います。

転換点となる時間と場所

3つとも、動きが止まる側の場面を選びました。
このタイプの転機は、走っている最中ではなく、走れなくなった数十秒に置くと効くからです。

1つめは、未明の宿の一室です。
三度目の引き払いの荷造りをしていて、手が止まる。
荷物は毎回同じで、しかも少しずつ減っていると気づいてしまう場面です。

2つめは、真昼の階段の踊り場。
上でも下でもない場所で、次にどちらへ行くかを初めて決められなくなります。
選択肢が3つ浮かぶはずの人に、1つも浮かばない。
この空白は、このタイプにとってかなり怖い出来事です。

3つめは、夕方の茶室です。
何も起きない時間を、席を離れずに座って過ごす。
ここだけは事件が起きないのがポイントで、耐えられたという事実だけが残ります。

熱中する人タイプを別の角度から見る

同じキャラクターでも、別の見方を1つ重ねると輪郭が増えます。
エニアグラムの内側で起きる移動と、他の体系との重なりを順に見ていきます。

余裕を失ったとき、改革する人タイプの顔が出る

さきほどのストレス時と同じ話ですが、こちらは相手との関係ではなく、内側の移動として見ます。
誰かとぶつかっているわけでもないのに、粗を数える振る舞いが自分の中から出てくる。
タイプが入れ替わるのではなく、普段は表に出ていない側が動いているだけです。

改革する人タイプの記事を横に置くと、この顔がどこから来たものなのかが見えやすくなります。

調子が出ているとき、調べる人タイプの顔が出る

逆に、余裕があるときには別の側が動きます。
調べる人タイプは「わかっていれば怖くない」を実装するために知識を蓄える人で、その落ち着いた集め方が、このタイプにも一時的に出てきます。

次々に移っていた人が、1つのことを腰を据えて調べ始める。
調べる人タイプの記事と並べると、この顔の中身がつかみやすくなると思います。

他の体系と共有しているもの

MBTIのENFPとは、発想・自由・飽きという3つの特性を共有しています。
同じ材料でも、座標の取り方が変わると見え方も変わるので、突き合わせると自分のキャラの位置が決めやすくなります。
この記事はまだ用意できていないので、公開したらここからつなぎます。

D&Dのアライメントで言うと、混沌中庸と臨機応変・自由・衝動の3つを共有しています。
善悪の話ではなく、同じ特性が別の軸の上に並んでいる、というだけのことです。
混沌中庸の記事のほうが行動の描き方に寄っているので、場面作りの参考になります。

9タイプ全体の並びを先に見たい人は、エニアグラムのハブ記事から入るのが早いです。
他の8タイプと比べたほうが、このタイプの速さがどれくらい特殊なのかがわかります。

熱中する人タイプのキャラと歩き出すために

弱さも個性も、すべてが物語の素材

飽きっぽさも衝動も、直すべき欠点として書く必要はありません。
むしろこの2つがないと、このタイプは物語の中で一度も痛い目を見ない人になってしまいます。

置いてきたものがあるから、笑っている場面が効くんですよ。
強みだけを丁寧に書いた原稿より、荷造りの手が止まる一場面があるほうが、読者の記憶には残ります。

物語を紡ぐことで見えてくるもの

このタイプを1本書くと、たいてい途中で「なぜ止まれないのか」を考えることになります。
その答えは設定資料には書いてなくて、動かしているうちに見つかるほうが多いです。

私も毎回そこで手が止まります。
止まっている時間は無駄に見えますが、そこで決めた一行が、あとの全部を支えてくれるんですよね。

さあ、あなたの物語を始めよう

材料はもう揃いました。
強みを3つ、弱点を2つ、それに職業とシンボルと場面。
全部を使わなくても、獺の石ひとつからキャラクターは立ち上がります。

あなたのキャラクターは、次の街へ行く準備をとっくに終えています。
あとは、どこで一度だけ足を止めさせるかを決めるだけです。
それが決まったとき、この人物はただ明るいだけの人ではなくなります。

まぁ、全部が当てはまるわけではないので、傾向として読んでもらえれば。
噛み合わない部分は、あなたの物語の側に合わせて崩してしまってかまいません。