INTP
INTPタイプのキャラを作りたいと思ったら
設定を調べているうちに、何を作ろうとしていたのか忘れていた。
そういう時間に心当たりのある人、皆さんの中にもいると思います。
キャラクターの名前を決めるつもりで暦の作り方を読みはじめて、気がつくと三時間たっている……。
ノートに残っているのは物語ではなく、途中で止まった調査メモだけ。
私はこれを何度もやりました。
INTPタイプというのは、その状態がそのまま性格になったようなキャラクターです。
MBTIと呼ばれる分類の中の一つで、四文字は内向・直観・論理・柔軟を指します。
定義の話はここまでにしましょう。
16タイプの解説はほかにいくらでもありますし、この記事で渡したいのは分類の知識ではないんですよ。
知りたいのは、こういう手触りのキャラを物語の中でどう動かすかのほうですよね。
正直、このタイプは書きはじめが楽で、途中で止まりやすいんです。
頭のいいキャラは会話が書きやすいので序盤は転がるんですが、物語が動く場面で急に手が止まる。
理由ははっきりしていて、このタイプのキャラは自分から何かを決めにいかないからです。
だからこの記事では、決めないキャラをどう物語の主役にするかまで踏み込みます。
強みを3つ、弱点を2つ、それに職業とシンボル、輝く場面と転換点。
まず1つだけ持って帰ってもらえれば十分です。
このタイプを映す言葉
「学者が自然を研究するのは、それが役に立つからではない。楽しいから研究するのだ」
——アンリ・ポアンカレ(19〜20世紀フランスの数学者、位相幾何学を切り開いた)
「美しくない数学に、この世界での永久の居場所はない」
——G.H.ハーディ(20世紀英国の数学者、『ある数学者の弁明』を書いた)
一言で言うとこんなタイプ
わかることが目的なので、わかった後のことを決めていない。
これがINTPタイプのキャラクターの核です。
謎を解く動機はあるのに、解いた謎をどう使うかの動機がありません。
だから物語では、答えを持っているのに動かない人物として置けます。
持っていない人ではなく、持ったまま動かない人。
ここがこのタイプの面白さの入口だと私は思っています。
INTPタイプのキャラは、ここが面白い
魅力1:分析力
このタイプの看板は分析力です。
ただ、同じ分析力でも、このタイプのものは使い道と切り離されているところが特徴なんですよ。
役に立つと言われても関心は上がらないし、役に立たないと言われても下がりません。
調べる理由が「わかっていないから」だけで完結している……そこがこのタイプの強さです。
物語では、誰も頼んでいない検証を勝手に進めている人物として描けます。
頼まれた仕事より、頼まれなかった疑問のほうが速く進みます。
魅力2:知的好奇心
好奇心の向きは、横ではなく下です。
気になったことが3つあっても、このタイプのキャラは3つ全部には手を出しません。
1つを選んで、その1つをどこまでも掘っていきます。
掘る深さの基準が本人の中にしかないので、まわりから見ると止めどきがわかりません。
物語では、全員が納得して先へ進んだ後も、一人だけその場に残っている人物として使えます。
魅力3:独立独歩
このタイプの独立は、行動ではなく思考のほうに出ます。
一人で旅に出るタイプではなく、他人の出した結論をそのまま受け取らないタイプです。
信頼している相手の言葉でも、自分で筋を追い直すまでは保留のままにします。
疑っているわけではなくて、確かめていないものを「わかった」と呼べないだけなんですよね。
物語では、多数派の意見が固まった場面で、一人だけ結論を保留している人物として置けます。
INTPタイプが抱え込みやすいもの
葛藤1:距離の取りすぎ
頭のいいキャラを書いていると、いつのまにか誰とも関わっていない人になっている……。
書きながらそれに気づいた経験、皆さんにもあるんじゃないでしょうか。
このタイプのキャラが人を遠ざけるとき、相手を視界から外しているわけではありません。
ちゃんと見えていて、ただ議論の相手としてしか見ていない時間が長いんです。
話題の外側に人が置かれていく、という言い方が近いと思います。
本人に悪気がないぶん、周囲は指摘しにくいんですよね。
物語では、長く話したのに何ひとつ伝わっていなかった、という形の衝突に転がせます。
葛藤2:様子見
もう一つは、検討が終わらないことです。
このタイプのキャラは、決めていないのではなく、まだ切り分けの途中だと思っています。
先送りにしている自覚がないところが、この弱点のやっかいなところですね。
分析力と様子見は、同じ根から生えています。
切り分ける精度が上がるほど、切り分けきる前に手を打つ気がなくなっていくわけです。
まぁ、全部のINTPタイプのキャラがこうなるわけではないので、傾向として読んでもらえれば。
INTPタイプに似合う職業とシンボル
物語で活躍させる職業アイデア
適職1:数の性質だけを調べる算術師
数がどう振る舞うかだけを調べていて、使い道を聞かれても答えない職人です。
このタイプの分析力が、そのまま職業の形になっている珍しい例だと思います。
物語では、計算を頼みに来た人と噛み合わない場面をつくると、輪郭が一気に出ます。
適職2:破られない鍵を設計する暗号設計者
解く側ではなく、作る側に立つ役どころです。
深く掘る好奇心が、守りの形になって出てきます。
自分の設計した鍵を誰かに破られる展開が、そのまま物語の転機として使えます。
適職3:伝承をどの話が先かだけで並べ替える系統の研究者
話の中身が本当かどうかには関心がなくて、どの話からどの話が生まれたかだけを追いかけます。
他人の出した通説をそのまま受け取らないので、並べ替えの結論が周囲と食い違うこともあります。
物語では、信仰されている伝承の順番を静かにひっくり返す人物として置けます。
このタイプを象徴するもの
動物:提灯鮟鱇
自前の灯りだけを持って、誰も来ない深さにいる魚です。
明かりを掲げているのに、それは誰かを呼ぶためのものではありません。
デザインに使うなら、暗い場所でだけ光る装飾を一つ持たせると、この性質が絵に出ます。
植物:松露
地面の下で育つきのこで、掘り出さないかぎり誰にも見つかりません。
成果が地表に出ないまま完成している、というこのタイプの在り方に重なります。
名前に使うなら、地中や埋もれるといった意味を持つ語を混ぜると質感が揃います。
人工物:迷宮の図
出口を探すためではなく、構造そのものを見るために描かれた図です。
使い道と切り離された分析が、そのまま形になっています。
アイテムとして持たせるなら、本人が一度も出口を通らない図にしておくと効きます。
色:月白
明け方の空の白さを指す色の名前で、物の色ではなく光の色を指しています。
実体をつかまえずに性質だけを見ている、という手つきに近い色です。
衣装に使うなら、白そのものではなく、青のごく薄い側へ寄せると近づきます。
自然現象:極夜
太陽が出ない期間が続くあいだも、星の位置だけは正確に動いていきます。
外から見て何も起きていないときほど、内側では順序どおりに進んでいます。
舞台に使うなら、時間の経過を空の明るさ以外で示す必要が出るので、それ自体が仕掛けになります。
INTPタイプがいちばんINTPらしい瞬間
誤りが出る場所を先に当てる
提出前の原稿を、何人かで読み合わせている場面です。
このタイプのキャラは一行目から順に読まず、途中の数ページをめくったところで手を止めます。
「この人、数字を並べたあとで必ず一つ足すんですよ。だから表の合計だけ見れば足ります」
指摘しているのは内容の正誤ではなく、書き手の癖のほうです。
誤りそのものより、誤りが生まれる場所の性質を調べています。
役に立つから調べたのではなく、癖の構造が面白かったから見ていた——結果として、いちばん速く直せる人になっているわけです。
一つだけ成り立たない例を探す
全員が正しいと認めている説について、話し合いがまとまりかけている場面です。
このタイプのキャラは賛成も反対もせず、その説が成り立たない条件を一つだけ探しに行きます。
「反対しているんじゃなくて、どこまで正しいのかを知りたいだけです」
広げるのではなく、一点に降りていく好奇心です。
説の全体を否定するより、一箇所だけ崩れる場所を見つけるほうが速いと知っています。
物語では、ここで置かれた一言が後半の伏線として効いてきます。
くじの配り方を確かめる
くじ引きで役割を決めることになり、みんなが結果に一喜一憂している場面です。
このタイプのキャラだけが、引き終わった後もくじの残りを数えています。
「結果は受け入れます。配り方が公平だったかは、自分で確かめてからにします」
不正を疑っているのではなく、他人が出した「公平でした」という結論を受け取らないだけです。
確かめ終わるまで、自分の中では判定が保留のままになっています。
一人で検算しているこの姿が、このタイプの独立がいちばん見える形だと私は思います。
INTPタイプが追い詰められたとき、何が起きるか
このタイプが対立しやすい相手
噛み合いにくいのは、まずENFPタイプです。
片方は結論を保留し続け、もう片方は結論より先に次の興味へ移っていきます。
方向が違うのではなく、どちらも同じ場所に着地しないという形の噛み合わなさなんですよ。
だから対立というより、二人でいるあいだ何ひとつ決まらないという形で表に出ます。
期限のある依頼をこの二人に任せてしまう展開は、そのまま一本の話になります。
ENFJタイプとも噛み合いにくくて、まず動こうという呼びかけが、このタイプには詰めの放棄に見えます。
逆にESTPタイプとは珍しく噛み合い、ESTPタイプが先に動いてINTPタイプが後から理由を言葉にする、という順序が成立します。
プレッシャーを受けたときの行動パターン
通常時のこのタイプは、切り分けることで落ち着きを保っています。
追い詰められると、その切り分けのほうを先にやめてしまうんですよ。
代わりに、人にどう思われているかだけが急に大きくなります。
ふだん扱っていない量の感情なので、本人が処理しきれず、内側に溜まっていきます。
外へ出ないぶん周囲は気づきにくくて、いつもより口数が減った、くらいにしか見えません。
この時期に一人で決めた結論が、後半の対立の火種になります。
転換点となる時間と場所
一つ目は、深夜の培養室です。
長く追いかけていた筋道が、ようやく一本につながった瞬間の場所になります。
わかった直後に、これを誰に話したいかが思い浮かばない——分析の外側が空白だったと本人が気づく転換点です。
二つ目は、秋の午前の石段。
上りきったところで、決めなかったはずのことが、いつのまにか決まったことになっていたと知る場面です。
保留は中立ではなかった、という気づきを、引き返せない高さと一緒に置けます。
三つ目は、夕方の受付です。
ずっと相手の話を聞いていたつもりで、名前を覚えていないと気づく場所……。
議論の相手としてしか見ていなかった時間の長さが、いちばん静かに突きつけられる形になります。
INTPタイプとつながる他のタイプ
同じ知的好奇心を持つタイプに、ENTPタイプがいます。
INTPタイプが一つを深く掘るのに対して、ENTPタイプは離れたもの同士を広く繋いでいきます。
同じ特性でも、向きが変わるとキャラの見え方がここまで変わります(ENTPタイプの記事)。
距離の取りすぎのほうは、ISTPタイプと共有しています。
INTPタイプは人を話題の外に置き、ISTPタイプは視界の外に置きます。
似た弱点を書き分けたいときは、この二つを並べて見ると輪郭が出ます(ISTPタイプの記事)。
体系をまたぐと、エニアグラムのタイプ5と、分析力・知的好奇心・独立独歩・距離の取りすぎの4つを共有しています。
共有している数としてはかなり多い部類ですが、同じものだという意味ではありません。
同じ特性が別の座標でどう記述されるかを見ると、キャラ設計の引き出しが増えます(タイプ5の記事)。
16タイプ全体を並べて見たいときは、16タイプのハブ記事から入ると位置関係がつかみやすいと思います。
INTPタイプと、あなたの物語のために
弱さも個性も、すべてが物語の素材
決まらないキャラは書きにくい、と感じるかもしれません。
ただ、決まらないことそのものを物語の軸にできるのは、このタイプの特権でもあるんですよ。
検討が終わらない人が一度だけ決める場面は、行動的なキャラが十回決める場面より重くなります。
物語を紡ぐことで見えてくるもの
このタイプを書いていると、役に立つかどうかで価値を測らない人物を、どう肯定するかという問題にぶつかります。
役に立つからではなく楽しいから調べ、正しいからではなく美しいから残す人物です。
その基準で動く人を一人書き切ると、書き手のほうの物差しも少し変わると私は思っています。
さあ、あなたの物語を始めよう
設定を全部そろえてから書きはじめなくても大丈夫です。
このタイプに関しては、むしろ決まっていない部分が残っているほうが、キャラが動きはじめます。
強みか弱点か、シンボルか職業か、まず1つだけ選んで置いてみてください。
あなたのキャラは、切り分けの途中のまま出番を待っています。
そこから先を決めるのは、キャラではなくあなたの物語のほうです。