INFP
INFPタイプから書きはじめるということ
設定ノートは何ページも埋まっているのに、その子が動く話は一行も進まない。
そういう机の前の時間を、けっこう長く過ごしている皆さんもいると思います。
INFPというのは、MBTIという分類で使われる四文字の一つです。
内向・直観・感情・柔軟の組み合わせ……と説明されても、それだけでは手が動きませんよね。
なのでこの記事では、そういう手触りのキャラクターをどう作るか、の話だけをします。
16タイプのなかで、INFPタイプのキャラクターがいちばん分かりやすく出るのは、譲る場面なんです。
たいていのことは、あっさり譲ります。
ただし一つだけ、どれだけ押されても動かないものを内側に持っている。
そしてこのタイプは、その一つを口では説明しません。
書きます。
紙に置かれた言葉のほうが、本人の口より正確に本人を言ってしまう——そういうキャラクターです。
正直、私はこの手触りのキャラを書くたびに、話が進まなくて焦ります。
動かないでいることが持ち味の子を、無理やり動かそうとしているので当然なんですが。
ここから先には、INFPタイプのキャラクターを形にするための材料を並べます。
強み3つと弱点2つ、職業とシンボル、輝く場面と転換点。
全部を使わなくていいので、一つだけ持ち帰って、あなたのキャラに置いてみてください。
このタイプを映す言葉
ミヒャエル・エンデ(20世紀ドイツの作家、『モモ』『はてしない物語』を書いた)は、空想の世界について繰り返し語りました。
それは現実から目をそらすための場所ではなく、それ自体がもう一つの本当の世界だ、と。
アーシュラ・K・ル=グウィン(20世紀アメリカの作家、『ゲド戦記』を書いた)は、空想を子どもだましの逃避と切り捨てる大人のほうが、想像することを恐れているのだと書いています。
INFPタイプのキャラクターが内側に守っているものも、たぶんこの位置にあります。
一言で言うとこんなタイプ
守り抜くと決めたものが一つだけあり、それ以外は譲れる。
これがINFPタイプの核です。
譲る場面が多いので周りからは柔らかく見えますが、柔らかいのは外側だけなんですよね。
あなたのキャラに当てはまるかを見るなら、「この子が絶対に譲らないものは何か」を一つだけ決めてみると早いと思います。
そこが決まれば、残りは全部譲らせていい。
INFPタイプのキャラは、ここが面白い
このタイプの持ち味は、押しの強さではないんです。
動かないでいることと、書くこと。
この2つが、3つの強みのどこにも顔を出してきます。
魅力1:理想を描く力
INFPタイプのキャラクターが抱えている理想は、実現するために掲げられていません。
動かさないでおくことが、その理想の役目なんです。
だから本人は、そこへ辿り着くための道筋をあまり持っていません。
周りが計画を詰めている横で、一人だけ「それは違います」とだけ言う。
そういう置き方をすると、この形が画面に出ます。
魅力2:表現力
このタイプの表現は、言葉の形で出てきます。
しかも、話した言葉より書いた言葉のほうが正確なんですよ。
口では三行しか言えなかった子が、渡した紙にはちゃんと全部書いてある。
物語では、本人がその場にいないまま気持ちだけが先に届く場面を作れます。
顔を合わせない伝達が、このタイプの見せ場になります。
魅力3:譲れない芯
芯が強いキャラクターはたくさんいますが、INFPタイプの芯には言葉の形があります。
問われれば説明できるんです。
「なんとなく嫌だ」ではなく、なぜそこだけ動かせないのかを言える。
説明できるということは、相手も反論できるということでもあります。
だから、このタイプの芯は物語のなかで何度も試される。
INFPタイプの物語を深くする2つの弱点
ここからは弱点ですが、直す欠点として並べているわけではありません。
物語を転がすのは、だいたいこちら側です。
葛藤1:衝突回避
ここまで読んで、うちの子これだ、と思い当たった人もいるかもしれません。
……このタイプの衝突回避は、我慢する形でも、その場を取り繕う形でもないんです。
離れます。
言い返さないのではなく、言い返す場所に居続けない。
本人としては波風を立てなかったつもりでも、結果は同じにはなりません。
物語では、大事な決定の場に本人がいなかった、という形の事故が起こしやすくなります。
誰も悪意を持っていないのに取り返しがつかない、という展開を作れるんですよ。
葛藤2:現実からの退避
もう一つは、現実から言葉の世界へ退避することです。
感覚の側へ逃げるのではなく、書くほうへ逃げる。
やっかいなのは、その逃げ場がそのまま作品にもなってしまうところなんです。
逃げた先で書いたものが、いちばんいい出来だったりします。
だから本人にも、逃避と創作の境目が見えません。
守るものが内側にあるほど、外へ出ていく理由が減っていく。
魅力1で書いた理想の裏側が、ここに出てきます。
同じ根から表と裏が生えているので、片方だけ消すことはできません。
INFPタイプのキャラ設定アイデア
物語で活躍させる職業アイデア
適職1:禁じられた物語を一つだけ暗記して運ぶ語り部
書き残せば燃やされる話を、身体に入れて運ぶ役です。
書けないから覚える、という制限がこのタイプに噛み合います。守り抜く理想が、身一つの形をとった職なんです。
物語では、その一篇を持っているだけで追われる立場になります。
逃走の理由が本人の内面と完全に一致するので、動機の説明がいりません。
適職2:消される予定の一冊を書き写す船内の司書
航行中に処分が決まった蔵書を、こっそり手で写している役です。
写す順番を、価値の高い順では決めません。自分が守ると決めた順に写します。
物語では、その順番そのものが本人の告白になります。
台詞をひとつも書かずに、何を大事にしている子なのかを出せるんですよ。
適職3:廃刊した雑誌を一人で出し続ける個人誌の編集人
部数が減っても、誌面の形だけは変えない。
ここが言葉の形をした芯そのものです。
採算の話をされても、そこだけは譲りません。
物語では、周りの人物が「なぜやめないのか」と問う装置になります。
問われるたびに、このタイプは説明できてしまう。
このタイプを象徴するもの
動物:山椒魚
暗がりで、古い形のまま生き続けている生きものです。
動かないでいることが、そのまま生き方になっている。
キャラクターの名前や紋章に置くと、地味さが弱さに見えなくなります。
使い魔や同居している生きものとして出すのも手です。
植物:睡蓮
水の下に長い茎があって、水面に出すのは一輪だけ。
見えている部分と、支えている部分の量が釣り合っていません。
衣装の刺繍や、部屋にひとつだけ置かれた植物として使えます。
「見えているのは一輪だけ」を、そのまま人物紹介の絵にできます。
人工物:封をしない手紙の束
書いたけれど、出していない手紙です。
出すために書かれたのではなく、書くために書かれている。
持ち物としてひと束持たせるだけで、このタイプの輪郭が出ます。
物語の終盤で一通だけ封をする、という使い方もできますね。
色:藤色
淡くて、輪郭の薄い紫です。
紫の系統ではありますが、強く主張してくる色ではありません。
髪や瞳より、裏地や便箋のような「近づかないと見えない場所」に置くと効きます。
遠目には無彩色に見える、くらいの分量が合います。
自然現象:地下水脈
地表には出ないまま、遠くまで流れているものです。
本人が黙っている時間にも、内側では動き続けている。
舞台の設定として、街の下に水の道が通っている土地を選ぶ手もあります。
能力名や組織名に使うと、静かなのに射程が長い、という質感が出ます。
INFPタイプのキャラクターが輝く場面
一字も変えずに残す
古い写本の一節が、湿気で読み取れなくなりかけている。
周りは「意味が通ればいいでしょう」と言って、今の言い方に直そうとします。
このキャラクターは机に残って、何度も書き直します。
意味を通すためではなく、元の一節と同じ形にするために書き直している。
「ここを変えたら、もう別の文になります」
理想へ向かって進むのではなく、動かさないでおくことが役目——だからこの子は、誰も見ていない清書で輝きます。
本人の言い方のまま、三行
けんかのあとで、謝りたいのに一行も書けなくなっている子がいる。
このキャラクターは横に座って話を聞いて、三行だけ書きます。
自分の言い回しではありません。
その子がふだん使っている語尾と言葉選びのまま、短く書く。
受け取った相手は、代筆だと気づかないまま返事を書きます。
話す言葉より書いた言葉のほうが正確に人を言う。
その力が、他人のためだけに使われる場面です。
全部譲ったあとで
役割分担を決める話し合いで、このキャラクターはほとんど全部譲ります。
担当も、順番も、やり方も、相手の言うとおりでいい。
ところが最後の一つになったところで、初めて手が止まります。
「そこだけは、私が書きます」
そして、なぜそこだけ動かせないのかを、その場で説明してみせる。
譲った量が多いほど、残った一つの輪郭がはっきりします。
芯が言葉の形をしているからこそ、この場面が押し問答ではなく告白になるんです。
INFPタイプの転機はどこで訪れるか
このタイプが対立しやすい相手
いちばん噛み合わないのはENTPタイプです。
ENTPは前提を疑うこと自体が楽しくて、あらゆる置き石を蹴ってみる。
ところがINFPタイプにとって、蹴られた石は芯そのものなんですよ。
片方は遊びのつもりで、片方は防衛になっている。
この非対称が、そのままドラマになります。
ENTPが悪気なく放った一言のあとで、INFPタイプの側が黙って席を立つ——ここから話を始めると、和解までを一本の筋にできます。
ESTPタイプとも噛み合いにくくて、こちらは速度の問題です。
身体で確かめるESTPには話が長く見え、INFPタイプには扱いが雑に見えます。
逆に、惹かれ合いやすいのはESFPタイプです。
INFPタイプが内側に置いたままにしているものを、ESFPタイプは身体で場に出してしまう。
書く人と演じる人、という関係になりやすいんです。
自分の書いたものが、目の前で声と身振りになって立ち上がる。
その瞬間をどう受け取るかを1シーン置くと、このペアは一気に動きます。
プレッシャーを受けたときの行動パターン
通常時のINFPタイプは、段取りにはあまり口を出しません。
理想は内側に置いたまま、進め方は周りに任せています。
ところが追い詰められると、ここが反転するんです。
理想を守るための段取りを、いきなり細かく立て始めます。
そして、他人の手順の粗さが急に許せなくなる。
ふだん使っていない側が、粗い形で出てくるわけですね。
本人も自分の変化に戸惑うので、周りとの摩擦がそのまま自己嫌悪に折り返します。
葛藤1で書いた退避が、平時より前に出てくるのもこの局面です。
転換点となる時間と場所
一つめは、未明の押し入れです。
探しものの途中で、昔の自分が書いたものが出てくる。
読み返して、今の自分にはこれが書けないと気づいてしまう場所です。
守るものは変わっていないのに、書く力のほうが動いていた。
この落差は、このタイプにしか刺さらない種類の痛みなので、物語の折り返しに使えます。
二つめは、午後の用水路の脇です。
雨で水かさの増えた流れの横で、守ると決めたものが「外から見たら小さい」と言われる。
反論できないけれど、譲りもしない。
芯が言葉の形をしているぶん、ここでは説明が通じない相手が置かれると効きます。
説明できるのに届かない、という経験が、このタイプを次の段階へ運びます。
三つめは、夕方の廊下の突き当たりです。
その場を離れたあとで、話が自分抜きで決まっていたと知る場所。
退避が結果を生んでしまう瞬間なので、葛藤1の直接の帰結になります。
引き返すか、そのまま黙って受け入れるか。
どちらを選ばせても、そのあとのキャラクターが変わります。
INFPタイプを別の角度から見る
同じ特性でも、別のタイプに載ると顔が変わります。
読み比べると、あなたのキャラをどちら寄りに置くかが決めやすくなりますよ。
「現実からの退避」は、ISFPタイプも持っています。
ただ、退避する先が違うんです。
INFPタイプは言葉の世界へ、ISFPタイプは感覚の側へ逃げます。
芯の形が言葉か感覚かで割れているので、ISFPタイプの記事([URL-1])と並べて読むと、その差がはっきりします。
「表現力」のほうは、ENFPタイプと共有しています。
INFPタイプは書いて出し、ENFPタイプは熱量で語って出す。
同じ表現力でも、出口が紙か声かでキャラクターの立ち方が変わります。ENFPタイプの記事([URL-2])にその形が出ています。
体系をまたぐと、エニアグラムのタイプ4と、表現力・現実からの退避という2つの特性を共有しています。
座標の取り方が違うだけで、同じ手触りが別の言葉で説明されている感じですね。
横串の記事([URL-3])でこの2本を並べて見ています。
16タイプ全体の見取り図を先に確認したい場合は、MBTIのハブ記事([URL-4])からどうぞ。
INFPタイプのキャラと歩き出すために
弱さも個性も、すべてが物語の素材
離れてしまうことも、書くほうへ逃げてしまうことも、直さないままで物語になります。
むしろ、決定の場からいなくなる子だからこそ作れる事故があるんですよ。
逃げ場がそのまま作品になってしまう性質も同じです。
ル=グウィンが書いていたとおり、それを子どもだましと切り捨てるほうが、たぶん何かを恐れています。
物語を紡ぐことで見えてくるもの
このタイプを書いていると、譲れないものを一つ決める作業を何度もやることになります。
キャラクターの分を決めているつもりが、けっこう手が止まるんですよね。
……まぁ、私がそれを毎回きれいに決められているかは、別の話なんですが。
それでも、一つに絞る作業をした回数だけ、キャラクターの輪郭は太くなります。
さあ、あなたの物語を始めよう
ここまで読んだ時点で、あなたはもう「この子が譲らないものは何か」を考え始めているはずです。
その問いを持てているなら、材料はだいたい揃っています。
強み3つも、シンボル5つも、全部使わなくて大丈夫。
一つだけ選んで置いてみてください。
あなたのINFPタイプのキャラクターは、封をしないまま束になった言葉を、もう抱えて待っています。