ESTP
ESTPタイプのキャラを、これから形にする人へ
考えるより先に動くキャラクターを書こうとして、途中で手が止まったこと、皆さんはありませんか。
設定メモには「大胆」「行動的」と書いたのに、いざ本編になると、動く理由をいちいち説明させてしまう。
……そうなると、もう別のキャラになっているんですよね。
MBTIという分類の中で、ESTPタイプはその「先に動く」側にいる四文字です。
16タイプのうちの一つ、という以上の説明は、この記事では要りません。
知りたいのは分類の理屈ではなく、そういうキャラをどう書くかのほうでしょうから。
このタイプのキャラクターを難しくしているのは、本人が理由を語らない点です。
頭で決めてから動くキャラなら、内心を書けば読者に伝わります。
ところがこのタイプは、決める工程そのものが省かれている。
書き手のほうが「なぜ動いたか」を持て余すことになるわけです。
だからこの記事では、内面を説明しない方向で組み立てていきます。
強み3つ、弱点2つ、職業とシンボル、そして場面。
動いた結果と、周りの反応だけで人物を立てるやり方です。
全部を使う必要はありません。
まず1つ選んで、手元のキャラに置いてみてください。
このタイプを映す言葉
「そこに、それがあるからだ」
——ジョージ・マロリー(20世紀英国の登山家、エベレスト遠征で消息を絶った)
「やる最も確実な方法は、やることだ」
——アメリア・イアハート(20世紀米国の飛行士、女性初の大西洋単独横断飛行を成した)
一言で言うとこんなタイプ
考えるより先に身体が動いて、たいてい間に合ってしまう。
ESTPタイプのキャラクターを一行にすると、ここに尽きます。
頭の中で手順を組み立てているうちに、もう手が伸びて、足が出て、事態のほうが片づいている。
本人は自分を「勘のいい人間」だとすら思っていません。
やってみたら通った、それだけのことを毎日くり返しているので、説明する言葉を持っていないんです。
あなたのキャラに当てはまりそうか、読みながら確かめてみてください。
ESTPタイプの持ち味は、この3つ
16タイプの体系では、強みの名前そのものは複数のタイプで共有されています。
だから大事なのは名前ではなく、その強みが「何に向くか」のほうです。
ESTPタイプの場合、3つとも向き先が身体と現場に固定されています。
魅力1:実利眼
このタイプのキャラクターが見ているのは、手元の道具でも、機構の仕組みでもありません。
その場が動くか、動かないか。判断の材料はそれだけです。
水の量、荷の重さ、人の数、足元の傾き——ばらばらの情報を一度に束ねて、答えを一つだけ出す。
まぁ、本人に理由を聞いても「見ればわかる」としか返ってこないでしょうね。
実際、迷っている時間そのものが損だと身体のほうが先に知っているわけです。
物語では、全員が立ち止まっている場面にこのキャラを置くと機能します。
状況を説明する役ではなく、状況を一つに切り落とす役として書けるんですよ。
魅力2:臨機応変
予定どおりに進んでいるあいだ、このタイプのキャラクターはさほど目立ちません。
本領が出るのは、段取りが崩れた瞬間です。
計画が全部飛んだところから数えて、いちばん速く次の一手を出すのがこのタイプなんです。
ここで押さえておきたいのは、即応の相手が状況のほうだという点です。
人の顔色を見て合わせているのではなく、崩れた条件そのものに反応している。
だから相手が誰であっても速度が変わりません。
物語では、事故・妨害・時間切れといった「計画を壊す出来事」を投げ込むほど、このキャラが前に出てきます。
魅力3:恐れのなさ
このタイプのキャラクターが怯まないのは、身体が危険にさらされる場面です。
高いところ、速いところ、崩れそうなところ。
普通なら足がすくむ条件で、平然と一歩目を踏み出せる。
議論で言い負かされない度胸とは、まったく別の話ですね。
ここで問われているのは頭の勝負ではなく、身体を危険側へ差し出せるかどうかです。
物語では、誰かが最初に行かなければ話が進まない場面を作ると、このキャラが自然に手を挙げます。
そして、その手の速さがそのまま次の章の火種にもなるんです。
ESTPタイプがつまずく2つの葛藤
強みの裏側は、たいてい同じ根から生えています。
このタイプの場合、怯まないことと確かめないことが、同じ速さの表と裏になっている。
ここを描かないと、キャラクターがただ都合よく動く便利な人になってしまいます。
葛藤1:無鉄砲
「勇敢だから飛び込む」のとは、少し違います。
このタイプのキャラクターは、身体が先に出てしまうんです。
危険を計算した上で引き受けたのではなく、計算の順番が来る前に着いている。
正直、ここを甘く書くと物語が痛みを持ちません。
誰かが後始末をしてくれる前提の勇ましさとは別の軸で、本人は仲間の存在すら計算していないわけです。
だから代償が出るときは、本人ではなく周囲に出ることがある。
そこが対立の種になります。
葛藤2:衝動
キャラクターの行動理由を考えていて、「なんでこの子はここで動いたんだろう」と自分でも説明できなくなること、ありませんか。
皆さんが手を止めるその瞬間が、このタイプにとっては通常運転です。
……決めた覚えのないうちに、もう始まっている。
楽しそうなほうへ引かれて動くのとも違います。
動機が快楽ではなく、単に身体の反応が先行しているんです。
物語では「なぜやった」と問い詰められて答えられない場面を作ると、このキャラの内側が一気に見えます。
説明できないという事実そのものが、このタイプの葛藤なんですよ。
ESTPタイプを形にする設定の素材集
物語で活躍させる職業アイデア
職業は、キャラクターの性質を毎日試してくる装置です。
このタイプなら、判断の速さが給料に直結する仕事を選ぶと輪郭が出ます。
適職1:橋のない川を人と荷ごと渡す渡し守
水位を見た瞬間に、今日は渡せるか渡せないかを決める仕事です。
場を読む力が、毎日、金と命の両方で採点される。
物語では、判断を間違えた日を一度だけ用意すると効きます。
渡ると決めた根拠を本人が言葉にできないまま、結果だけが残るからです。
適職2:大気圏突入の角度を手動で決める降下艇の操縦士
計算どおりの条件なら、機械のほうが正確でしょう。
このキャラが要るのは、条件が崩れたあとです。
数字が追いつかない速度で手が動く人間を、船はそういうときのために乗せている。
物語では、装置が壊れてから物語の主導権がこの人物に移る、という組み立てができます。
適職3:火災現場で最初に中へ入る消防の先行隊
迷った数秒が、そのまま誰かの生死に化ける場所です。
このタイプのキャラクターは、その職務を苦行として選んでいません。
迷わない自分がいちばん役に立つ場所を、たまたま見つけただけなんです。
物語では、この「選んだ理由の薄さ」を仲間に問われる場面が、関係の転がし方になります。
このタイプを象徴するもの
シンボルは、名前や小道具、色づかいに落とすと効きます。
5つのうち1つ選んで使うだけでも、キャラクターの手触りは変わりますよ。
動物:豹
豹は加速だけで勝負を決める狩り手です。
長く追いかけることはせず、距離が詰まったその一瞬に全部を置く。
持久力の動物ではないという点まで含めて、このタイプによく似ています。
名前に斑(はん)や影を織り込む、装飾に斑点を散らす、といった使い方ができます。
植物:薊
薊はどこにでも生えて、触れれば刺します。
大事に育てられる花ではなく、勝手に生きて勝手に強い草なんです。
スコットランドでは国の象徴として扱われてきた植物でもあり、荒れ地の強さがそのまま誇りになっている。
紋章や刺繍のモチーフに置くと、扱いにくさごと魅力になります。
人工物:手綱
握った瞬間に進む方向が決まる道具です。
地図や羅針盤と違って、考える余地を与えてくれません。
持っている人間の判断が、そのまま速度に変わる。
形見の品や、腰に下げた一本として持たせると、このタイプの手癖が形になります。
色:朱色
朱色は混じり気のない赤です。
暗くも淡くもならず、迷いの色を含んでいない。
古くから顔料として使われ、遠くからでも一目でそれとわかる色として扱われてきました。
衣装の一点、目の色、印の色に置くと、キャラクターの断定的な速さが視覚に出ます。
自然現象:落雷
光が見えたときには、もう落ちたあとです。
決まる前に終わっているという時間の順番が、このタイプの動き方とそのまま重なります。
音が遅れて届くところまで含めて、周囲の理解が後追いになる構造も同じですね。
紋章や異能の名前に使うと、速さの質まで説明できます。
ESTPタイプがいちばんそのタイプらしい瞬間
ここからは、実際の場面として書いてみます。
3つとも、判断の相手がモノと現場に置いてあるのが特徴です。
三秒で捨てるものを決める
荷が積み切れない。
全員が荷の山を前に、どれを残すかで言い合っている。
このタイプのキャラクターは山を一周して戻ってくると、三つを地面に降ろしました。
「これとこれは置いていく。あとの一つは中身だけ抜く」
理由を聞かれても答えは短い。
「持って歩けないから」
重さと道と残りの日数を、頭ではなく目のほうが束ねている。
動くか動かないかだけで切り落とすから、三秒で済むんです。
段取りが全部飛んだあとで
予定していた順路が塞がり、道具の半分が使えなくなりました。
手順書はもう役に立ちません。
このタイプのキャラクターは、残った道具を並べ直して、使えるものだけで組み替えはじめます。
「この順番でいく。あとは走りながら決める」
崩れた条件そのものが、このキャラの入力になっている。
計画が生きているあいだより、壊れたあとのほうが手が速い。
そういう人間が一人いると、全滅する場面が全滅しなくなります。
先に渡ってみせる
増水した川の前で、隊列が止まりました。
渡れるかどうかを議論している時間が、そのまま日暮れを近づけていく。
このタイプのキャラクターは何も言わずに水へ入り、腰まで浸かったところで振り返りました。
「ここまでは平気。荷は肩に上げろ」
安全を確かめてから進んだのではなく、確かめる役を自分の身体で引き受けたわけです。
怯まないという性質が、そのまま全員の足を進める。
ただし、これが空振りだった日の話も、どこかで書いておきたいところですね。
ESTPタイプの転機はどこで訪れるか
このタイプが対立しやすい相手
いちばん噛み合わないのはINFPタイプです。
身体で確かめてから話すこのタイプと、言葉で理想を守るINFPタイプでは、そもそも順番が逆になっています。
INFPタイプの目にはこのタイプの扱いが雑に映り、このタイプの耳にはINFPタイプの話が長く感じられる。
物語では、片方が守ろうとしたものを、もう片方が善意で動かしてしまう場面を作ると、対立が一気に立ち上がります。
逆に、意外なほど噛み合うのがINTPタイプです。
ESTPタイプが先に動き、INTPタイプが後から「今のはこういう理屈だった」と言葉にする。
順序が逆でも成立してしまう、珍しい組み合わせなんですよ。
物語では、二人でしか通じない会話が成立している状態を先に見せておくと、そこが壊れたときの落差が使えます。
INFJタイプとは、内側を潜って考えが届くころにはこのタイプがもう現場に着いている、という形ですれ違います。
プレッシャーを受けたときの行動パターン
通常時、このタイプのキャラクターは目の前のことしか扱いません。
ところが追い詰められると、ふだん触らない「この先どうなるか」を考えはじめます。
そして、その先読みが根拠のない確信の形で居座ってしまう。
結果として起きるのは、動けなくなることです。
いちばん速かったはずの人間が、意味を考え出した途端に一歩目を出せなくなる。
まぁ、ふだん使っていない側が粗い形で出てくるので、当然といえば当然ですね。
ここでは葛藤2の衝動が消えるのではなく、行き場をなくして内側に溜まる、と書くと自然につながります。
転換点となるときと場所
早朝の砂丘。
間に合わせ続けてきた記録の中で、間に合わなかった一件だけが手元に残っている場面です。
速さで解決してきた人間にとって、届かなかった一回は速度では埋められません。
物語の中盤、勝ち続けた流れを一度止める位置に置くと効きます。
正午の射場。
一度だけ、身体が先に出なかったときの話です。
自分の反射を疑ったことのない人物が、はじめて自分の内側を観測する瞬間になる。
ここは短く、説明を足さずに書くほうが強いですね。
夜の控え室。
次に何をするかを、はじめて先に聞かれる場面です。
いつも動いたあとで結果を渡してきたキャラクターが、動く前に言葉を求められる。
終盤、このタイプが誰かを率いる側へ移るときの入口として使えます。
ESTPタイプとつながる他のタイプ
同じ強みを持つタイプは他にもいます。
ただ、同じ名前の強みでも、向き先が変わると別の顔になるんです。
「臨機応変」で並ぶのがESFPタイプです。
このタイプの即応が向かうのは状況で、ESFPタイプの即応が向かうのは人。
同じ速さでも、見ている先が違います。ESFPタイプの記事と読み比べると、その差がはっきりします。
「恐れのなさ」で並ぶのはENTPタイプで、こちらは身体ではなく論戦を恐れない側です。ENTPタイプの記事も同じ角度で見ると面白いですよ。
体系をまたぐと、アライメントの混沌中庸が「臨機応変」と「衝動」の2つをこのタイプと共有しています。
座標の置き方はまったく別の体系ですが、特性の層では重なる部分がある、という関係ですね。混沌中庸の記事も、キャラ作りの素材としては地続きです。
16タイプ全体の並びを見たい場合は、16タイプのハブ記事から入ってみてください。
さあ、ESTPタイプの物語を
弱さも個性も、すべてが物語の素材
身体が先に出てしまうことも、決めた覚えのないうちに始まっていることも、直すべき欠点として書く必要はありません。
怯まなさと確かめなさが同じ根から生えている以上、片方だけ抜くと魅力のほうも一緒に抜けます。
そこに川があったから渡った、としか言えない人物のまま置いておいていいんです。
物語が動くのは、その速さが誰かを助けた日と、誰かを困らせた日の両方が書かれているときなんですよ。
物語を紡ぐことで見えてくるもの
このタイプのキャラクターを書いていると、説明できない行動をどう見せるかという問題に必ずぶつかります。
本人が理由を語れないぶん、周囲の反応と、結果として起きたことで示すしかない。
……と、えらそうに書きましたが、私も毎回そこで手が止まります。
ただ、そこで詰まった時間は、他のどのタイプを書くときにも効いてくる部分ですよ。
さあ、あなたの物語を始めよう
設定を全部そろえてから書きはじめる必要はありません。
今日決められるのは、たとえばシンボルを一つ選ぶことくらいで十分です。
豹でも、薊でも、朱色でも。
一つ決まると、次に決めるものが勝手に見えてきます。
それに、このタイプばかりは動かしてみないと分からないところがあります。
あなたのキャラクターは、考えるより先に動く準備をもう終えています。
あとは、動ける場所を一つ書いてあげるだけです。