ESFP

ESFPタイプというキャラクターの手触り

明るいキャラクターを書こうとして、ただうるさいだけの人になってしまった。
そんな手応えのなさに覚えのある皆さんも、いるんじゃないでしょうか。

明るさというのは、性格の説明では出てこないんですよ。
地の文で「明るい子です」と書いた瞬間に、その子は明るくなくなる。
出てくるのは、誰かがいる場所にその子が入ってきて、場の温度が実際に動いたときだけです。

文化祭の前日、作業に飽きて誰も口を開かなくなった教室ってありますよね。
そこへ一人入ってきて、5分後には全員が手を動かしながら喋っている。
あの切り替わりを起こせる人が、ESFPタイプのキャラクターです。

ESFPタイプは、MBTIと呼ばれる分類の16タイプのうちのひとつです。
四文字は外向・現実・感情・柔軟を指していて、五感で確かめながら人のほうへ出ていく側に置かれています。
定義の話はここまでにして、そういうキャラクターをどう作るかへ移ります。

このタイプが面白くなるのは、場を明るくする力と、暗い場に耐えられない弱さが同じ根から出ていると分かったときです。
明るい性格は長所として置かれがちですけど、置いただけでは物語が動かない。
まぁ、動かすための材料をこの記事に並べたつもりです。

強み3つ・弱点2つに、職業とシンボル、見せ場になる場面と転換点をまとめました。
全部を使うことはないので、刺さったものを1つだけ持ち帰ってもらえれば十分です。

このタイプを映す言葉

「身体は、言葉にできないことを語る」
——マーサ・グレアム(20世紀アメリカの舞踊家、モダンダンスを築いた)

「笑いは、人と人との最短距離だ」
——ヴィクトル・ボルゲ(20世紀デンマークの喜劇的ピアニスト、音楽と笑いを重ねた)

一言で言うとこんなタイプ

その場が明るくなることに、自分の居場所を賭けているタイプです。
誰かを楽しませているあいだだけ、そこにいていい理由がはっきりする。
だから場の空気が沈んだとき、揺らぐのは気分ではなく居場所のほうなんです。

ESFPタイプの持ち味は、この3つ

魅力1:人を惹きつける力

このタイプの魅力は、人をどこかへ連れて行く力ではありません。
いま目の前にある場の温度を上げる、それだけに特化した力です。
目的地を作らないので、集まった人たちは何を目指すでもなく、ただそこに居続けてしまう。

物語では、目的も利害もない集団が解散しない理由として使えます。
このタイプのキャラクターが一人いるだけで、寄り道の場面が成立するんですよ。

魅力2:表現力

言葉で説明するより先に、身体が動いているタイプです。
やって見せたほうが速いと判断しているというより、説明の手順を踏む前に手足が出ている。
だから伝わり方は乱暴で、そのぶん速い。

描写では、台詞を書かずに動作だけで一場面を通すと持ち味が出ます。
説明台詞をまるごと削れるので、テンポの落ちた中盤に置くと効きます。

魅力3:臨機応変

このタイプが反応しているのは、状況ではなく人の顔です。
場の空気が変わる瞬間——誰かの笑いが半拍遅れた、視線が下がった、その手前でもう別の話を始めている。
本人は考えていなくて、気づいたら口が動いていた、くらいの速度で起きます。

物語では、ほかのキャラクターの動揺を最初に拾う役が務まります。
読者に「いま何かあったな」と知らせる合図として置けるんです。

ESFPタイプの物語を深くする2つの弱点

葛藤1:顔色をうかがう

ここまで読んで、明るいキャラってこんなに面倒なのかと思った皆さんもいるかもしれません。
……面倒なんですけど、その面倒さがそのまま葛藤になります。

このタイプは、その場の反応が薄いと、自分の形のほうを変えてしまいます。
相手に合わせて言うことを変えるのではなく、合う形が見つかるまで自分を作り直すほうへ行く。
魅力1に書いた「場の温度を上げる力」と、これは同じひとつの感度です。

場を明るくできる感度は、暗いままの場に耐えられない感度でもあるわけです。
物語では、本人が素の自分がどれだったか分からなくなる場面が転がしどころになります。

葛藤2:衝動

このタイプの衝動は、楽しさの方向にだけ働きます。
危険や刺激そのものに引かれるのではなく、面白くなりそうな側へ勝手に足が向いている。
その結果として危ない場所にいる、という順番です。

まぁ、本人に悪気がないぶん、止める側は理屈を使えません。
物語では、誰も反対しきれないまま全員が巻き込まれる形の事件が作れます。
反例はいくらでも出てきそうなので、傾向として読んでもらえれば。

ESFPタイプの輪郭を作る小道具

物語で活躍させる職業アイデア

適職1:祭りの前夜に飛び入りで踊る旅の踊り手

呼ばれていないのに、その場の中心になってしまう職業です。
言葉の通じない土地でも、踊ってしまえば説明が要らない。
物語では、この人物が来た夜だけ祭りの規模が変わるという形で、土地の側の変化を描けます。

適職2:長期航行の乗員の士気を保つ船内司会

沈んだ場を上げる役が、正式な職務として置かれている点が効きます。
気晴らしではなく仕事なので、本人が疲れていても続けることになる。
物語では、笑わせる義務を負った人物が笑えなくなる展開へまっすぐつながります。

適職3:商店街の呼び込みで人を集める実演販売の売り子

反応が薄ければ、その場で見せ方を変えられる職業です。
台本を渡されても、3日目には別のものになっている。
物語では、通行人の足が止まった回数がそのまま実力として見える、分かりやすい舞台になります。

このタイプを象徴するもの

動物:飛魚

水の中を泳いでいる姿より、跳ねて出てきた一瞬のほうを覚えられる魚です。
本体は水中にいるのに、記憶されるのは空中の数秒だけ。
名前や紋章のモチーフに使うと、見られる側にいるキャラクターだという含みが出ます。

植物:鳳仙花

熟した実に触れると弾けて、種を遠くまで飛ばす植物です。
驚くのは触れた側で、本人は弾けただけ。
持ち物の刺繍や家名に置くと、周囲のほうが動かされてしまう性質が形になります。

人工物:鈴

そこにいることが音で分かってしまう道具です。
黙っていても存在が知れるので、隠れることには向いていません。
装身具として持たせると、登場の合図をキャラクター自身が持ち歩いている状態になります。

色:山吹色

遠くからいちばん先に目に入る色です。
群衆の場面で、一人だけ位置が分かるという使い方ができます。
衣装の一部にだけ差しておくと、読者が画面のどこにいるかを追えるようになります。

自然現象:潮騒

常に音があって、止まらない現象です。
静けさの反対というより、静けさを許さない持続の側にあります。
このタイプの持ち歌や二つ名に重ねると、賑やかさが意思ではなく体質なのだと伝わります。

ESFPタイプの見せ場を切り取る

10分後には、全員が笑っている

初対面ばかりが集められた部屋。
誰も自己紹介の順番を切り出せず、椅子を引く音だけが続いています。
そこへ最後に入ってきたこのタイプのキャラクターが、扉のところで足を止めて「ここ、全員はじめまして? 最高じゃないですか」と言う。
10分後には、全員が誰かの失敗談で笑っています。

このタイプは、誰かをどこかへ導いたわけではありません。
目的地を作らないまま、その場の温度だけを上げた。
集まりが解散しない理由が、この一人だけで足りてしまうところが見せ場です。

見た人が、同じ動きになる

稽古の前、広場で動き方を教える場面。
このタイプのキャラクターは、説明を始めません。
一度やって見せて、もう一度、今度は少しゆっくりやって見せる。
3度目には、見ていた全員が同じ形で腕を上げています。

言葉で手順を渡すと、覚える速さに差が出ます。
身体をそのまま渡すと、差が出る前に写ってしまう。
説明より先に動くという持ち味が、いちばん素直に効く場面です。

取り違えた注文の行方

混み合った店内で、運んだ皿が別の卓のものだったと気づく瞬間。
謝るより先に、このタイプのキャラクターは皿を掲げて「こちら、本日いちばん人気の間違いです」と言ってしまう。
取り違えられた客が笑い、隣の卓が同じものを頼み、誰も気まずくならないまま話が流れていきます。

拾っているのは、失敗そのものではありません。
客の顔が固まりかけた、その半拍のほうを拾っている。
反応する相手が状況ではなく人であることが、いちばん分かりやすく出る場面です。

ESFPタイプが追い詰められたとき、何が起きるか

このタイプが対立しやすい相手

いちばん噛み合わないのは、ISTJタイプです。
その場の勢いで動く人と、決めたことを決めたとおりに運ぶ人。
ESFPタイプにとって予定は当日の空気で動かしていいものですが、ISTJタイプから見ると、それは約束を軽く扱っているようにしか見えません。

どちらにも悪意がないのに、片方は不誠実を見て、片方は窮屈を感じる。
この二人を同じ計画の担当に置くと、事件が起きる前から物語が動きます。

噛み合う相手はINFPタイプで、内側にあるものを場に出す役と、それを書く役の関係になりやすいです。
反対にINTJタイプとは、いまが全部という感覚と結末からの逆算とで、時間の流れ方そのものが噛み合いません。

プレッシャーを受けたときの行動パターン

通常時は、場の空気の変わり目に反応して、明るいほうへ場を運びます。
ストレス時はそれをやめて、筋の通らなさを一つずつ数え上げはじめます
ふだん出さない理屈が、それも身内に向かって出る。

周りは驚きます。
楽しい人だと思っていた相手が、急に整合性の話を始めるからです。
正直、この落差は書きどころだと思っていて、明るさが体質ではなく選択だったことが、ここで初めて読者に見えます。

転換点となる時間と場所

夏の朝、まだ誰も来ていないプールサイド。
見ている人がいない場所では、このタイプはいつもの調子が出ません。
明るさが自分のものなのか、場から借りていたものなのかを確かめる場面として使えます。

昼の屋台。
さんざん笑わせた相手が、実はずっと心配していたのだと後から分かる場面です。
笑わせることが相手のためだったはずなのに、相手はその手前を見ていた——この行き違いは、このタイプにしか作れない転換になります。

夕暮れの桟敷。
見られる側にいたキャラクターが、一度だけ見る側の席に座ります。
拍手を送る側に回ったときに何を感じるかで、そのあとの選択が変わってきます。

横串で見るESFPタイプ

同じ特性でも、タイプが違えば出方が変わります。
気になったところだけ辿ってもらえればと思います。

人を惹きつける力は、ENFJタイプの記事でも扱っています。
ESFPタイプはその場を明るくする魅力で、ENFJタイプは人を導く魅力。
同じ惹きつけるでも、連れて行く先を持っているかどうかで別物になります。

衝動のほうは、ESTPタイプの記事と並べると輪郭が出ます。
ESFPタイプの衝動は楽しさの方向へ、ESTPタイプの衝動は身体が先に出る形で働きます。
向かう先が違うので、同じ考える前に動くでも、事故の起き方が変わるんですよ。

体系をまたぐと、エニアグラムのタイプ3の記事とは、人を惹きつける力・顔色をうかがうという2つの特性を共有しています。
共有しているのは特性であって、同じものだという意味ではありません。
並べて読むと、ひとつの特性が別の体系ではどう書かれるのかが見えてきます。

ほかのタイプも見比べたいときは、16タイプのハブ記事から辿れるようにする予定です。
いまは準備中なので、先に近いタイプの記事から覗いてもらうほうが早いかもしれません。

ESFPタイプのキャラと歩き出すために

弱さも個性も、すべてが物語の素材

顔色をうかがう癖も、楽しいほうへ足が向く衝動も、直さないまま置いておけます。
このタイプの場合、その2つを取ると場を明るくする力まで一緒に落ちるんですよ。
同じ感度から出ているので、弱点だけを抜けないんです。

だから、欠点として書かなくていいんです。
物語が動く場所として書けば、それだけで一本の筋になります。

物語を紡ぐことで見えてくるもの

明るいキャラクターを書くのは、静かなキャラクターより難しいと私は思っています。
明るさには説明が効かないので、場面を作るしかないからです。
裏を返すと、このタイプを一場面書けたなら、場面を作る力がもうついているということになります。

まぁ、えらそうに書きましたが、私も明るいキャラで何度も転んでいます。

さあ、あなたの物語を始めよう

まずは1つだけ選んでみてください。
強みでも、シンボルでも、転換点でもかまいません。
1つ決まると、そのキャラクターが立つ場所のほうが先に決まります。

あなたのキャラクターは、笑わせる相手がまだ決まっていないだけです。
相手を一人置いた瞬間から、勝手に動きはじめます。

それでは、あなたの物語で。