ENTP

ENTPタイプのキャラを作りたいと思ったら

口の達者なキャラを書こうとして、書き上がったものを読み返したら、ただ感じの悪い人になっていた。
皆さんの中にも、そういう経験のある人がいると思います。
頭の回転が速い設定にしたはずなのに、原稿の中では周りを言い負かしているだけ……。

MBTI(アルファベット4文字で性格を表す分類)でいうENTPタイプは、その落とし穴のちょうど手前に立っているタイプです。
16タイプの中でも「議論好き」と一言でまとめられやすく、その一言のせいで書き手が迷子になりやすい。

ただ、このタイプのキャラクターが楽しんでいるのは、勝ち負けのほうではないんですよ。
「そもそもこの前提、正しいんでしたっけ」と足元をめくる、あの瞬間のほうです。
勝ちたいのではなく、めくりたい。ここがズレると、途端に嫌な人になります。

逆に言えば、そこさえ掴んでおけば書けます。
議論に勝ったのに本人だけ興味を失っている、みたいな場面が自然に書けるようになるんです。

この記事では、ENTPタイプのキャラクターを形にするための材料を並べていきます。
持ち味を3つ、苦しくなる場面を2つ、職業とシンボル、見せ場と転機。
全部を使う必要はありません。まず1つだけ、あなたのキャラに置いてみてください。

このタイプを映す言葉

「第一原則は、自分をだましてはいけないということだ。そして自分は、いちばんだましやすい相手なのだ」
——リチャード・ファインマン(20世紀アメリカの物理学者、量子電磁力学で業績を残した)

「人生において恐れるべきものは何もない。ただ、理解すべきものがあるだけだ」
——マリ・キュリー(19〜20世紀ポーランド出身の物理学者、放射能の研究でノーベル賞を受けた)

一言で言うとこんなタイプ

前提を疑うのが楽しくて、勝ち負けのほうが二の次になる。
それがENTPタイプのキャラクターの手触りです。
議論の場に立つのは、相手を負かすためではなく、みんなが当たり前だと思って踏んでいる床板を一枚はがしてみたいから。

だから、論破した直後に本人が急に静かになる、ということが起きます。
床板をはがし終わったら、そこにもう用がないんですよ。
この温度差が、キャラクターとしての面白さになります。

ENTPタイプの持ち味は、この3つ

魅力1:知的好奇心

このタイプの知的好奇心は、一つの分野を掘り下げる方向にはあまり伸びません。
離れた場所にあるもの同士を並べて、「これ、同じ形をしていませんか」と言い出すほうに伸びます。
詳しいから強いのではなく、繋ぐのが速いから強い。

物語では、専門家が3人がかりで行き詰まっている場面に横から入れると動きます。
まったく違う分野の話を1つ持ってきて、話の筋をずらす役です。
知識量で勝負させるより、組み合わせの意外さで見せたほうがこのタイプらしくなると私は思っています。

魅力2:発想力

ENTPタイプの発想は、人ではなく仕組みのほうへ向かいます。
「あの人をどう説得するか」より先に、「そもそもこのルール、こう置き直せば説得が要らなくなりませんか」が出てくるんです。
人間関係を動かすのではなく、人間関係が乗っている土台を組み替える発想ですね。

物語で使うなら、対立の解決役に置くと効きます。
両者を仲裁するのではなく、対立の原因になっている決まりごとのほうを書き換えてしまう。
周りが「そこは動かせない前提だと思っていた」と言う瞬間が、このタイプの見せ場になります。

魅力3:恐れのなさ

このタイプが恐れないのは、高い場所でも暗い場所でもありません。言葉のぶつかり合いです。
目上の相手だろうが、その場の空気が固まろうが、おかしいと思った筋には普通に踏み込んでいきます。
正直、周りからすると心臓に悪い。

ここは書きやすい強みでもあります。
全員が黙っている場で、一人だけ手を挙げて質問させればいい。
踏み込んだ後に気まずくなっても、本人だけは平気でいる——その落差が、恐れのなさの描写になります。

ENTPタイプが苦しくなるのは、どんなときか

葛藤1:飽きっぽさ

このタイプの飽きは、途中で嫌になる形では出てきません。
議論が決着した瞬間に、関心のほうが先に切れるんです。
組み替えるのが目的だったので、組み上がった時点で用が済んでしまう。

魅力2で書いた発想力と、これは同じ根から生えています。
仕組みを新しく置き直す力と、置き直し終わったものに戻ってこられない性質は、表と裏なんですよ。
物語では、本人が持ち込んだ改革の後始末を誰かが黙って引き受けている、という形にすると転がります。

葛藤2:反発

ここまで読んで、身近な誰かの顔が浮かんだ人もいるかもしれません。
……このタイプの反発は、相手が嫌いだから起きるのではないんです。

噛みつく先が人ではなく前提そのものなので、相手の立場や事情はほとんど視界に入りません。
だから本人には論を磨いているつもりしかないのに、相手には人格を否定されたように届く。
まぁ、いちばんこじれやすいのがこの型ですね。

キャラクターとして描くなら、悪気の不在を必ず1文入れると立体的になります。
言い負かした相手が黙り込んだあと、本人が「で、次の論点ですが」と続けてしまう。
それだけで、悪意ではなく無自覚なんだと読者に伝わります。

ENTPタイプの輪郭を作る小道具

物語で活躍させる職業アイデア

適職1:学派の異端審問に自分から出向いて論を張る遍歴の論客

負ける可能性のある場へ、呼ばれてもいないのに自分から出ていく職業です。
論戦を恐れない性質が、そのまま移動と旅の理由になります。

物語では、主人公一行が立ち寄る土地ごとに事件を持ち込む役として機能します。
本人は論を張りに来ただけなのに、結果として土地の秩序が揺れる。
放浪の理由づけに悩んでいるなら、かなり使い勝手のいい設定だと思います。

適職2:既存の法則の抜けを探して装置を組む反証実験家

正しさを証明する側ではなく、崩す側に賭ける研究者です。
仕組みのほうを組み替える発想が、そのまま実験装置の設計に出てきます。

SF世界に置くと、物語の設定そのものを揺らす装置になります。
作中で当たり前とされている法則に、このキャラクターが一つ穴を開ける。
世界観の説明を、説明ではなく事件として出せるようになるんです。

適職3:看板や意匠を「なぜこの形か」から作り直す意匠家

前提を疑うことが、そのまま仕事として成立する数少ない現場です。
依頼された看板を作る前に、その看板が必要かどうかから検討し始めます。

現代を舞台にした物語では、日常の中に違和感を差し込む役になります。
誰も疑っていなかった街の風景を、このキャラクターが一つずつ言葉にしていく。
大きな事件がなくても話が動くので、静かな物語にも置けますね。

このタイプを象徴するもの

動物:鴉

鴉は道具を使う鳥として知られていますが、必要がないときにも試している姿が観察されています。
目的のない試行そのものが習性になっている——ENTPタイプの好奇心の形と重なります。

デザインに使うなら、羽の黒に光の反射を入れると単調になりません。
名前に「烏」の字を一つ混ぜるだけでも、印象が締まります。

植物:宿り木

他の木の枝の上で育ちながら、その木とは違う実をつける植物です。
場を借りていながら、出てくるものが場の論理に従っていない。
このタイプの立ち位置に、そのまま重なります。

紋章や家紋のモチーフにすると、所属と異物性を同時に表せます。
「どこかの組織に属しているが、明らかに浮いている」キャラの設定に向いています。

人工物:梃子

力の大きさではなく、支点をどこに置くかで結果が変わる道具です。
前提の置き場所を変えるだけで動くという、このタイプの発想の形をそのまま持っています。

武器や道具として持たせるなら、細長い棒状のものを一本持たせるだけで成立します。
組織の名前や称号に使っても、思想が伝わりやすいモチーフですね。

色:緑青

銅が変化して出てくる緑です。
もとの赤茶けた色から、この緑は予想できません。
変化した先が読めないところが、このタイプの手触りに合います。

衣装の差し色に使うと、落ち着いて見えるのに、どこか座りが悪い印象を作れます。
屋根や扉の描写に一色混ぜるだけでも、世界観の年季が出ます。

自然現象:乱気流

性質の違う空気の層がぶつかったときにだけ起きる現象です。
単体では起こらず、違うもの同士が接する場所に生まれる。
離れた分野を並べたがるこのタイプの働き方と、成り立ちが同じなんですよ。

異能や魔法の系統に使うなら、単体で強い力ではなく、2つの力の境目でだけ発動する設定にすると個性が出ます。

ENTPタイプのキャラクターが輝く場面

片方だけの手袋から

拾得物の棚に、片方だけの革手袋が置かれています。
持ち主を探す当てはありません。
そこでこのキャラクターは、手袋を裏返して指の内側を見ます。

「人差し指の内側だけ擦り切れてる。字を書く人ですね。あと、この寸法だと手が小さい。革の質はいいのに、繕い直した跡がある。買い替えないで直す人です」
棚の前で、持ち主の暮らしが一つずつ組み上がっていく。

ここで効いているのは、手袋への詳しさではありません。
革と筆記と金銭感覚という、離れたところにある話を並べて繋いだからこそ、一人の人間の輪郭が出てきたんです。

貼り紙一枚で、規則が動く

「私語厳禁」の貼り紙は3年前からあって、3年間守られていません。
破った人を罰する話が持ち上がったところで、このキャラクターが紙とペンを取ります。

書き上がった新しい貼り紙には、こうあります。
「ここは、声を出さずに考える場所です」
「禁止を守らせるより、そもそも守りたくなる形に書き換えたほうが早いので」

罰則を強くする方向にも、見回りを増やす方向にも行かない。
規則が乗っている土台のほうを組み替えるという、このタイプの発想の向きが出ている場面です。

その場で、講師に聞く

講義の後半で、講師の説明が前半と食い違いました。
気づいた人は何人かいます。全員、黙っています。
質疑の時間、このキャラクターだけが手を挙げます。

「前半では順番が決まっていると伺いましたが、いまの説明だと入れ替えられることになりませんか。どちらで理解すればいいでしょう」
言い方はまっすぐで、悪意も遠慮もありません。

場の空気が固まっても、本人だけが平気でいる。
この落差が、論戦を恐れないという性質の見え方です。

ENTPタイプがぶつかる壁の描き方

このタイプが対立しやすい相手

いちばん噛み合わないのは、ISFJタイプです。
ENTPタイプが議論だと思ってやっていることが、ISFJタイプには揉め事にしか見えないんですよ。
片方は前提を検討しているつもりで、もう片方は場が壊れていく音を聞いている。同じ場面を見て、起きていることの認識が違うわけです。

ドラマにするなら、ISFJタイプが場を整え直した直後に、ENTPタイプが「そもそもこの集まり、必要でしたっけ」と言う——この一言だけで、2人分の物語が立ち上がります。

噛み合う相手としてはINTJタイプが挙がります。ENTPタイプが前提を壊し、INTJタイプが組み直す。壊す作業と建てる作業が、同じ設計図の上で成立するんです。
逆に、INFPタイプとは静かにこじれます。ENTPタイプが遊びのつもりで壊してみせるものが、INFPタイプにとっては芯だからです。

プレッシャーを受けたときの行動パターン

通常時のENTPタイプは、「これまでどうだったか」を真っ先に疑います。
前例は検討の対象であって、根拠ではないという構えですね。

ところが追い詰められると、ここが反転します。
前例と細部を手放せなくなるんです。
ふだんなら一番に疑っていたはずの「前はこうだった」を、議論の中で論拠として持ち出し始める。

まぁ、本人はその変化に気づいていません。
周りのほうが先に「あの人が前例の話をしている」と違和感を持つ、という形で書くと自然です。
飽きっぽさが平時より前に出て、決着を急ぐようになるのもこの時期ですね。

転換点となる時間と場所

明け方の通信室。当直の交代まで、まだ時間があります。
論を通した相手が、翌日から口をきかなくなった——返信の来ない回線の前で、それに気づく時間だけがある場所です。
勝ったはずの議論が何を失ったのかを、静かに数えさせられます。

昼の道場。床板の並びまで見える明るさの中で、稽古の合間に言われます。
「昨日、あなたが勝った話の中身、覚えていますか」
覚えていない。
過程が楽しくて中身に興味がなかったことが、他人の口から出てくる場面です。

夕方の変電所。点検の手順は決まっていて、疑わずに従ったほうが確実に速い。
それでも手が止まって、確認しないと進めなくなる。
疑うことが持ち味であるはずのこのタイプが、疑ったせいで遅れる——この一度きりの経験が、後の判断を変えていきます。

ENTPタイプを別の角度から見る

同じ「飽きっぽさ」を持つタイプに、ENFPタイプがいます。
ただ、切れ方が逆なんですよ。ENTPタイプは決着した瞬間に関心が切れますが、ENFPタイプは次が浮かんでしまうから終われない。
同じ特性が、別のタイプでは違う顔になる例です(ENFPタイプの記事)。

知的好奇心のほうは、INTPタイプと共有しています。
こちらは向きの違いで、ENTPタイプは広く繋ぎ、INTPタイプは深く掘る。
好奇心の強いキャラを2人並べたいときは、この2つを配ると書き分けられます(INTPタイプの記事)。

恐れのなさと反発——この2つを共有しているのが、アライメントという別の体系で扱っている混沌善の記事です。
体系が違っても、特性そのものは同じ棚に並んでいるんですね。

16タイプ全体の見取り図が知りたくなったら、MBTIのハブ記事のほうへ。

あとはENTPタイプを書くだけ

弱さも個性も、すべてが物語の素材

決着した瞬間に興味が切れることも、前提に噛みついて相手を黙らせてしまうことも、直さなくていいんです。
むしろそこがないと、このタイプは物語の中で何も起こさなくなります。
床板をはがす人がいるから、話が動くわけですから。

周りに迷惑をかけているキャラクターのほうが、読者は目で追います。
完璧に配慮のできるENTPタイプは、書けはしますが、たぶん退屈です。

物語を紡ぐことで見えてくるもの

このタイプを書いていると、書き手のほうが先に気づくことがあります。
自分が「そういうものだから」で通していた設定が、けっこうあるという事実にです。
キャラクターが前提を疑い出すと、書き手も一緒に疑うことになるので。

その過程で世界観が作り直しになることもあります。手間ではありますが、その作り直しの分だけ物語が固くなるのは確かです。
……まぁ、私も何度か途中で世界設定を作り直しているので、あまり気軽には勧めにくいんですが。

さあ、あなたの物語を始めよう

ここまで並べた材料を、全部使う必要はありません。
強みを1つ、場面を1つ。それだけで、あなたのキャラは立ち始めます。

あなたのキャラクターは、まだ誰も手をつけていない前提を一つ、めくりに行く準備をしています。
あとは、その場面を書くだけです。