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「中立中庸の性格」についてざっくりまとめてみました

陶器の魔法使いのイラスト

Out beyond ideas of wrongdoing and rightdoing, There is a field. I'll meet you there.
(善悪を超えた先に、穏やかな平原がある。そこで会おう)

ジャラール・ウッディーン・ルーミー(13世紀)

μεσότης δὲ δύο κακιῶν, τῆς μὲν καθ᾽ ὑπερβολὴν τῆς δὲ κατ᾽ ἔλλειψιν
(二つの悪徳の間に中庸はある。過剰という悪徳と、不足という悪徳の間だ)

アリストテレス『ニコマコス倫理学』(紀元前4世紀)

一言で言うとこんな性格

いや、正直言って……このタイプを一言で表現するって難しいんですよね。
「善でも悪でもなく、秩序でも混沌でもない」という二重否定の存在ですからね。
あえて言うなら、状況と文脈によって最適解を選び続ける、実利主義者ってとこですかね。

善悪の絶対基準を信じず、かといって無秩序を好むわけでもない。
理想に殉じることもなければ、欲望のままに生きるわけでもない。
……つまり、物語における「分かりやすいポジション」を回避し続けている存在です。

物語で輝く3つの魅力

複数の陣営を横断できる

中立中庸はどの派閥にも完全には属さない「中間者」です。
善の陣営からは「信用できない」、悪の陣営からは「徹底していない」と見られがちですが……極論の派閥同士の仲介役になりうる存在です。
対立する勢力の間を行き来し、情報を運び、時には仲介者として機能する。
便利すぎて「中立中庸が出てきたら全て解決する」みたいなリスクもありますけどね。

ダブルスタンダードを許容する

これは弱点にも見えるんですが……「矛盾を抱えたまま生きられる」のは強みです
原理原則に縛られないから、状況Aでは法を守り、状況Bでは法を破るというダブルスタンダートを平気でする。
理想主義者が自己矛盾に苦しむシーンの横で、中立中庸は涼しい顔で実利を取ります。

自己欺瞞からの自由

このタイプの地味だけど重要な長所は、「自分は善人だ」という幻想を持たないことです。
偽善者特有の自己正当化をしないから、自分の行動の汚い部分も冷静に認識できる。
ムリのある正当化をせず、悪事は悪事とちゃんと認められる……言うと簡単ですが、これができる人は少数です。

このタイプの葛藤ポイント

関係構築の困難さ

冷静に考えてください。
「この人は本当に味方なのか?」という疑念を常に抱かせるキャラクターと、深い信頼関係を築けますか?
仲間からは「いざという時に裏切るかもしれない」と警戒され、敵からは「取引相手として信用できない」と見なされる。
孤立しやすい構造を持っているんですよ、中立中庸は……。

極端な状況での判断停止

「どちらでもない」という選択肢が許されない瞬間が物語には必ず来ます。
「仲間を見捨てるか、自分が犠牲になるか」という二択を突きつけられたとき、バランス重視の思考回路は機能不全に陥る。
中立を保とうとするあまり決断できず、結果的に最悪の事態を招く……という展開は、中立中庸の王道パターンですね。
まぁ、それが物語的に美味しいんですけど。

キャラクター設定のアイデア集

物語で活躍させる職業アイデア

国際組織の調停官

国家間の利害を調整する仲裁者ですね。
どの国にも完全には属さず、中立的立場から交渉を行うという設定は、中立中庸の本質と完璧に合致します。
「火の国と水の国、どちらの味方でもない第三者」として物語を動かせる……物語構造的にも美味しいポジションです。

賞金稼ぎ(フリーランサー)

えぇ、これは定番ですが……依頼内容と報酬次第で善人も悪人も追う職業は、中立性を体現していますね。
「今日はお前を捕まえる側、明日はお前に雇われる側」という流動的な関係性を自然に描けます。
ただし、安易に使うと「金で動く浅いキャラ」になるので、報酬以外の動機づけは必須です。

契約魔法の執行者

ファンタジー世界で「契約の文言通りに魔法を執行する、感情を挟まない審判者」という役割。
善人同士の契約も、悪人同士の取引も、等しく法的拘束力を与える存在。
「私は契約を守らせるだけで、その内容の是非は判断しない」という無機質さが……逆にキャラクター性として立ちますね。

このタイプを象徴するもの

えぇ、これは生と死の境界に立ち、どちらにも属さない「間の存在」として神話に登場します。
北欧神話では知恵の象徴、日本神話では神の使い。
一方、不吉の前兆とも見なされる両方の性質を持つ存在。
この「どちらでもある」性質は、中立中庸の本質と重なりますね。
黒いシルエットが視覚的にも映えるので、デザイン的にも優秀です。

「どこにでもある、目立たないが確実に存在する」という特性が、中立中庸の立ち位置に似ているんですよ。
石にも木にも生え、光があってもなくても生存する適応力。
派手さはないものの、生態系において重要な役割を果たす……地味だが不可欠な存在として、脇役キャラに向いていますね。

「映すだけで、自らは何も主張しない」という中立的な存在なんです。
善人を映せば善を、悪人を映せば悪を反射する……相手次第で変わる性質は、中立中庸の適応力と重なります。
また、「真実を映す」という象徴性も持つので、客観性を重視するキャラに適していますね。

黄昏

昼と夜の境界、光と闇が混ざり合う時間帯です。
完全な明るさでも、完全な暗さでもない……中立中庸を示す時間帯です。
物語の転換点や、キャラクターの内面的変化を描くシーンで効果的に使えますね。

灰色

完全な中立、善悪秩序混沌のすべてから等距離……
色を持たないことが、中立中庸の本質
なんですよ。
どの色と組み合わせても相性が悪くない、のも中立中庸らしいですね。

ベージュ

主張しない、目立たない、でも確実に存在する。「どちらでもない」を視覚化した色ですね。
砂漠、羊皮紙、漂白されていない布……いや、地味ですが、それがこのタイプの真骨頂です。
パッと出てきたイメージのものも、個性的ではないものの、ないと困るものばかり……印象は薄いものの重要なもの、忘れられがちだけど大切な存在、まさに中立中庸ですね。

このタイプのキャラクターが輝く瞬間

中立中庸が物語で最も魅力的に見えるのは、「善悪の二項対立では解決できない問題に直面したとき」なんですよ。
正義の味方が「悪を倒せば解決だ!」と叫び、悪役が「力こそすべてだ!」と吠える中……このタイプだけが「いや、そもそもこの対立構造自体が問題だが?」と冷静に指摘できる。

具体例を挙げましょう。
敵対する二つの国の戦争を止めるため、どちらの国にも属さない第三者として和平交渉を行うシーン
正義の国は「我々が正しい」、悪の国は「我々が正しい」と主張する中、このタイプは「どちらも正しくない、どちらも間違っていない」という立場から妥協点を探る……。
「大人の解決」を体現できるんです。

あるいは、「仲間が暴走したとき、それを止める役割」も適しています。
熱血主人公が復讐に走り、仲間全員が感情的に同調する中……一人だけ冷静に「それは本当に正しいのか?」と問いかける。
嫌われ役を引き受けてでも、集団の暴走を止める……。
「冷たいやつ」と思われがちですが、後々で「あいつが正しかった」と再評価される展開は、もう鉄板ですよね。

さらに言えば、「敵味方が入れ替わる複雑な政治劇」でこそ、このタイプの真価が発揮されます。
昨日の敵が今日の味方、今日の味方が明日の敵……と敵と味方が入れ替わる状況で、中立中庸は自分の信念を保つことができます。
立場が固まっていないからこそ、不安定な状況では「中立を保ち続ける存在」という立場が際立ちます。

キャラクターを成長させる衝突と試練

このタイプが対立しやすい相手

中立中庸は「強い信念を持つキャラクター」全般と対立しやすいんです。
理想主義者とは相性最悪ですね……。
「お前はなぜ戦わない!」「どちらの味方なんだ!」という詰問に対し、このタイプは「別にどちらの味方でもない」と答えるしかない。

具体的には、秩序善との衝突が物語的に美味しいです。
「法と正義のために戦う騎士」と「状況次第で法を破る実利主義者」……水と油ですよね。
「お前のその行動は正義に反する!」「正義とやらで腹は膨れないんだが?」という価値観の対立は、まさにという対立です。

そして、混沌悪とも対立します
「すべてを破壊する」という極端な思想に対し、中立中庸は「それ、非効率的だよね?」と冷静にツッコミを入れる。
狂気に対する正気、情熱に対する冷静さ……という対比が生まれますね。
ただし、悪役との対立は「正義の代行者」として対立しているわけではない、これだけは注意を。

面白いのは、同じ中立中庸タイプ同士でも対立するという展開。
「利益のために動く者」と「好奇心のために動く者」……動機が違う中立同士の衝突は、「中立にも多様性がある」と示せます。
この中立を保つ者の対立を描くのは難易度が高い……のが問題ですね。

プレッシャーを受けた時の行動パターン

このタイプは追い詰められると、自分の利益だけを追い求めるになります
普段は「まぁ、痛み分けってことで」と余裕を見せているのに、極限状態になると「自分の生存が最優先」と冷酷な計算を始める……。

具体的には、「仲間を切り捨てる」という選択をためらいなく実行してしまう。
いつもなら「助けられる範囲で助ける」程度の協調性があるのに、極限状況では「足手まといは置いていく」と即断する。
この豹変ぶりが、周囲からの信頼を失う瞬間なんですよ……。

あるいは、決断を先延ばしにして事態を悪化させるパターンもあります。
「どちらを選んでも代償が大きい」状況で、このタイプは「第三の選択肢を探そう」と時間を浪費する。
その間に状況は悪化し、結果的に「何もしなかったことが最悪の選択だった」と気づく……という展開。
もちろん、よりよい選択肢が見つかる場合もありますが……二択を選びたくないだけの時に、いい選択肢は出てきませんからね。

先延ばしの反対で、一時的に極端な判断を下すようになる展開もあります。
普段は中立を保っているのに、強いストレスで「やっぱり秩序が必要だ!」あるいは「すべてを破壊すべきだ!」と極端な結論に飛びつく。
「中立」が不安定な立場だと示せる……扱いが難しいですが、キャラクターの深みを出せます。

転換点となる時間と場所

中立中庸の成長や変化を描くなら、「境界」を示す場所が効果的なんです。
国境の検問所、橋の真ん中、山の峠……物理的に「どちらでもない場所」が、印象的な舞台になります。
「ここから先に進むのか、戻るのか」という二択を突きつけられる場所で、中立中庸は「中立でいられない瞬間」と向き合うわけです。

時間帯で言えば、「黄昏時」や「夜明け前」が定番ですね。
一日の境界、明暗の入れ替わり……中立中庸の内面も変化する。
「今日と明日の間で、俺は何者になるのか?」という自問を促す時間帯として機能します。

状況としては、二者択一を強制されるシーンが最も効果的。
「右の扉か、左の扉か」「仲間を救うか、使命を果たすか」……中立を許さない選択の瞬間。
中立中庸がどちらを選ぶか、あるいは選べずに立ち尽くすか……その描写が、キャラクターの成長(あるいは退行)を示すんです。

二者択一の状態の反対として完全な孤独に置かれる状況も面白いです。
誰の目も届かない、誰の評価も影響しない……そんな場所で、中立中庸は「自分は本当は何を望んでいるのか?」と向き合わざるを得ない。
他者や状況に応じて態度を変えてきた中立中庸が、初めて「素の自分」と対峙する瞬間……自分で選択肢を1から考えないといけない瞬間。
中間を取ろうにも、上下も左右もない状態では取れないですからね。

あなたの物語を紡ぐために

弱さも個性も、すべてが物語の素材

正直に言いますが……「中立」は最も書きにくいタイプの一つです。
分かりやすい動機がなく、一貫性のある行動原理を見つけにくく、共感を得るのが難しい。
でも、だからこそ……書き手の腕が試されるんですよ。

中立中庸の「優柔不断」「日和見」「信念の欠如」……すべて、物語を豊かにする要素なんです。
欠点があるからこそ、成長の余地がある
完璧な正義の味方には戦う理由の描写は省略されがちですが、中立中庸なら「なぜ戦うのか」を一から構築する物語が書けます。

「善でも悪でもない」は「何もない」ではない……これを理解してください。
中立とは、無数の可能性を秘めた白紙の状態なんです。
どんな色にも染まれる、どんな形にもなれる……その自由さを、弱さではなく強さとして描けたとき、中立中庸はもっとも個性的で可能性に溢れた存在になりまsy。

物語を紡ぐことで見えてくるもの

中立中庸を書くことは、自分自身の価値観を問い直す作業になるんですよ。
「私は何を信じているのか?」「なぜそれを信じているのか?」……中立中庸を描くには、まず書き手自身がこの問いと向き合う必要がある。

えぇ、善悪を単純化せず、状況の複雑さを受け入れ、簡単な答えを拒否する……このプロセスは、正直、疲れます。
でも、だからこそ、心に残る物語が生まれるんです。
世界は白黒では割り切れない。それを再確認させられるでしょう。

中立中庸が葛藤し、迷い、時には間違った選択をし、それでも前に進む姿……それは、完璧ではない人間の、それでも諦めない物語なんです。

さあ、あなたの物語を始めよう

「善でも悪でもない」物語は、誰かにとっての救いになる

正義の味方になれない人、悪役にもなりきれない人……世の中の大多数は、このグレーゾーンで生きているんですよ。
「どちらでもない自分」に罪悪感を持っている人に、「それでいいんだ」と伝えられるのが、中立中庸の物語なんです。

完璧な信念なんて持たなくていい。
一貫した行動原理なんてなくていい。
状況に応じて態度を変えることは、弱さじゃなく、適応力……。
そして、迷いながらも進み続ける中立中庸の背中を、温かく見守ってやってください。

えぇ、このタイプの物語は書きにくいです。
でも、だからこそ、書く価値があるんですよ……。
単純化された善悪の物語では描けない複雑さ、その中で新しい何かを見つけるかもしれない。

中立中庸は分かりにくく曖昧な存在です、アライメントの中では最も描写が難しく、人気がないでしょう。
ですが、プレイヤーに委ねられた部分が多いということは、キャラクターの可能性が最も広いアライメントとも言えるでしょう。

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