fL'homme est condamné à être libre.
(人は自由という刑に処されている)ジャン=ポール・サルトル『存在と無』(1943)
Mit deiner Liebe gehe in deine Vereinsamung und mit deinem Schaffen, mein Bruder; und spät erst wird die Gerechtigkeit dir nachhinken.
(愛とともに、孤高の道を進みなさい。その道をあなたは創造性と愛で切り開いていくのです。評価は遅れてついてきます)フリードリヒ・ニーチェ『ツァラトゥストラはこう語った』(1883)
一言で言うとこんな性格
権威も道徳も縛られない、徹底した自由の追求者。
善悪の基準ではなく「自分がどう生きたいか」を基準に独自の選択を重ねていく。
「何を考えているかわからない」存在ですが、物語の中では誰よりもドラマティックな存在になれるタイプですね。
物語で輝く3つの魅力
徹底した自己決定権
他人の期待にも、社会の常識にも、一切忖度しない決断の純粋さ。
「みんながそう言っているから」「昔からそうだから」という理由では、混沌中庸を説得できないでしょう。
だからこそ、周囲が同調圧力に屈する中で唯一「NO」と言える存在になれる。
……柔軟なのに独特な頑固さ。マイペースとも言えるかもしれませんね。
本能的な危機察知能力
組織や権威に依存していないぶん、自分の身を守る嗅覚が鋭いんです。
「空気を読む」のではなく「空気の変化を読む」能力とでも言いましょうか。
他のキャラが「まだ大丈夫だろう」と油断している段階で、真っ先に逃げ出せる直感力。
本能的に有効的が敵対的かを察知するので、野生生物の襲撃だけではなく、組織の反乱分子を察知する……なんてこともあるかもしれません。
好奇心
「やってはいけない」と言われると、逆に「なぜダメなのか確かめたくなる」探究心の持ち主。
道徳的タブーも、社会的制約も、混沌中庸にとっては「試す価値のある仮説」でしかないんですよね。
禁断の魔法に手を出したり、立入禁止区域に突入したり……物語のきっかけを作るキャラとして優秀です。
トラブルメーカーでもあるんですけど、物語を大きく動かす存在ですね。
このタイプの葛藤ポイント
無責任
自由を最優先するあまり、自分の行動が他者に与える影響を軽視しがちなんですよ。
「俺は自分の好きにやっただけだ」という言い分は確かにその通りなんですが……その結果、誰かが傷ついたり、状況が悪化したりする。
混沌中庸の無責任さが引き起こした問題が、後々大きな対立の火種になります。
「お前のせいで仲間が死にかけたんだぞ」と詰め寄られる展開は、混沌中庸の成長を描く上で避けて通れない試練ですね。
長期的視点の欠如
「今、この瞬間」の自由を優先するあまり、将来的なリスクや代償を考えない短絡性。
目先の利益に飛びついて、後で取り返しのつかない事態を招く……行動力があるからこそ陥る問題ですね。
「あの時もう少し考えていれば」という後悔の場面は、混沌中庸の内面を掘り下げる絶好の機会です。
キャラクター設定のアイデア集
物語で活躍させる職業アイデア
密輸業者
法も国境も関係なく、独自のルートで自由に行き来して禁制品と情報を運ぶ。
どの世界の権力にも属さない独立性が、混沌中庸ですね。
また、手に入らないものという法的束縛を無視し、自由な取り引きをする存在……混沌中庸らしいですね。
主人公たちに「表のルートでは手に入らないもの」を提供する情報屋的な役割と、予測不可能な行動で物語を引っ掻き回す役割の両方を担えます。
革命の傭兵(フリーランス)
特定の思想に共感するわけではなく、「面白そうだから」という理由で反乱軍に参加する戦士。
革命の信念や報酬額ではなく個人的な興味で動く気まぐれさが、混沌中庸ですね。
思想や信条に共感して参加なら秩序らしさが出ますし、報酬目当てなら悪の要素がでてきます。
味方陣営に緊張感をもたらし、「こいつは本当に信用できるのか?」とつねに疑われる存在です。
いっそ、報酬に釣られてくれた方が上層部は気が楽でしょう。
禁術研究者(アウトロー魔術師)
魔法学会から追放されながらも、倫理を無視した実験を続ける異端の研究者。
社会的な規範よりも知的好奇心を優先する姿勢が、混沌中庸の危険性です。
主人公たちが「正攻法では勝てない」敵と戦う際に、禁断の力を提供する……なんてこともあるでしょう。
正攻法なら魔法学会に、どうしようもならない案件はアウトローに……という一筋縄ではいかない世界の必要悪ですね。
このタイプを象徴するもの
コヨーテ
ネイティブアメリカンの神話で「トリックスター」として描かれる存在です。
狡猾さと予測不可能性、そして秩序を乱す存在としての役割を体現しています。
キャラクターや団体の紋章にどうぞ。
コヨーテは日本の作品だとマイナーなので独自性も出ていいと思いますよ。
毒キノコ
美しい外見と危険性を併せ持ち、触れるべきか避けるべきか判断に迷わせる。
魅力と危険が表裏一体という、混沌中庸の二面性を表現できます。
素直に調合している毒薬の原料や、魔法の触媒。ロゴに携行する道具……明確なモチーフなので使いやすいですね。
トランプのジョーカー
スペード、クローバー、ダイヤ、ハート……そのどれでもない存在。
そして、ゲームのルールを覆す特別なカード。
既存の枠組みに収まらない例外的存在として、混沌中庸端的に表します。
持ち歩くお守りや、賭博シーンで文字通り切り札として使う。なんてどうでしょうか。
定番のシンボルなので、出し方を工夫しないとダサくなりますが、インパクトのあるモチーフです。
流星
決まった軌道を持たず、一瞬の輝きで闇を切り裂いて消える。
混沌中庸の一箇所に留まらず、常に動き続ける生き方を象徴しています。
必殺技の名前や、異名としてどうでしょうか。
虹色
予測不可能、多面性、定まらない本質……。
一つの色に収まらない自由さを表現する完璧な選択です。
銀色
光の角度で色が変わる、掴めない、流動的……。
このタイプの「適応力」と「一貫性のなさ」を同時に示せます。
水銀、鏡、月光……形を持ちながら定まらない矛盾が、混沌中庸そのものですよね。
このタイプのキャラクターが輝く瞬間
全員が「できない理由」を並べている時に、混沌中庸が「やってみよう」と動き出す場面。
周囲が常識に縛られて身動きが取れない状況で、混沌中庸だけが「ルールなんて知らない」という武器を持っている。
……無謀かもしれませんが、その無謀さが物語を前に進めるんですよ。
あるいは、裏切り者が誰かを探る緊迫した場面で、「俺は最初から誰の味方でもない」と開き直る瞬間。
他のキャラが「善か悪か」の二元論で争っている中、その枠組み自体を無効化する発言ができるのが混沌中庸の強み。
物語の視点を一段階引いた位置に持っていき、考え方の転換をさせられます。
もう一つ挙げるなら、「計画通り」と言っている仲間の隣で、「計画? 俺は知らないけど」と笑っている場面ですかね。
他人の計画に乗っかりながら、いつでも離脱できる自由を保持しているしたたかさ。
そのいい加減さが、計画が崩壊した時のセカンドプランに繋がる……というのもあるでしょう。
キャラクターを成長させる衝突と試練
このタイプが対立しやすい相手
「秩序善」や「秩序中庸」とは、価値観のレベルで相容れません。
「ルールを守れ」「責任を果たせ」という要求は、混沌中庸にとって「自由への侵害」以外の何物でもないんですよ。
特に、組織のリーダーや騎士団長といった「規律を重んじる立場」のキャラとは、ことあるごとに衝突します。
……お互いに「こいつは理解できない」と思っているので、対立は深刻化しやすい。
また、「善」寄りのアライメントからは批判されがちですね。
混沌中庸が「自由」と呼ぶものを、相手は「無責任」と断じるわけです。
混沌中庸の行動が「誰かを見捨てる選択」に繋がった時、厳しい追及を受ける展開なんてあるかもしれません。
正直、言い返せない部分もあるので、混沌中庸が珍しく黙り込む……という重い空気の展開に繫がったり。
では悪と仲がいいかと言えば……「秩序悪」のキャラとも相性は最悪です。
秩序悪は「自分のための秩序」を作りたがるのに対し、混沌中庸そもそも秩序そのものを嫌悪している。
「俺たちの組織に従え」と命令されれば、即座に裏切るか逃亡するかの二択。
独裁者と自由人の対立は、究極的な分断です。肩を組むことはまずないでしょう。
プレッシャーを受けた時の行動パターン
通常時はどこを吹く風、ひょうひょうとしていて余裕を感じさせる混沌中庸ですが……。
追い詰められると、「逃げる」か「暴れる」かの極端な二択に走りがちです。
冷静な判断や計画的な対応ではなく、本能的な反応で動き出してしまうんですよ。
特に「自由を奪われる」という恐怖を感じた時の反応は激しい。
捕まりそうになると、仲間を囮にしてでも逃げようとする。
逃げ場がないと判断すると、無差別に攻撃を始める。
……普段の「気まぐれだけど害はない」雰囲気が一転して、手の付けられない危険な存在に変貌します。
あるいは、責任を追及され続けると、開き直って「だったら全部壊してやる」という自暴自棄モードに。
自分を縛ろうとするもの全てを敵と見なし、関係性を断ち切りにかかる。
……この段階まで来ると、もう誰の言葉も届かないんですよね。
混沌中庸が孤立の極致に達し、本当に大切なものを失ってから気づく……という展開が王道です。
転換点となる時間と場所
嵐が過ぎ去った後の廃墟。
自分の無責任な行動が引き起こした破壊の痕跡を、一人で見つめる場面。
誰もいない静寂の中で、初めて「自由の代償」を実感するシチュエーションです。
……他人の説教では響かなくても、目の前の現実は嘘をつきませんからね。
国境のない荒野、あるいは法が届かない無法地帯。
混沌中庸が最も自由でいられる場所のはずが、同時に「誰も助けてくれない」孤独を突きつけられる場所でもある。
完全な自由の中で、「自由だけでは生きていけない」という矛盾に気づく転換点になります。
もしくは夜明け前の最も暗い時間。
逃げ続けてきたこのタイプが、ついに立ち止まらざるを得なくなる象徴的な時間帯。
「もう走れない」「これ以上失うものはない」という状態で、新しい選択を迫られる。
……まぁ、ベタな演出ですけど、混沌中庸を描くには効果的ですよ。
あなたの物語を紡ぐために
弱さも個性も、すべてが物語の素材
正直に言いますが、混沌中庸は「良い人」ではありません。
無責任だし、利己的だし、信用できない。
……でも、それでいいんですよ。
物語において、完璧な人間ほどつまらないものはない。
欠点があるから葛藤が生まれ、弱さがあるから成長の余地が生まれる。
混沌中庸の「自由のために犠牲を出す」姿勢は、確かに問題です。
でも、その問題こそが物語を動かすエンジンになるんですよね。
「混沌中庸」は、創作において最も扱いやすいタイプの一つです。
善にも悪にも振れる可能性を持ち、予測不可能な選択で読者を驚かせられる。
……あなたが描きたいのは、聖人の物語ですか? それとも、生々しい人間の物語ですか?
後者なら、混沌中庸の「不完全さ」を恐れる必要はありません。
物語を紡ぐことで見えてくるもの
混沌中庸と行動していると、不思議なことに気づくはずです。
「自由」を叫ぶキャラクターほど、実は自由ではないという逆説。
なぜ混沌中庸は権威を憎むのか。なぜ束縛を恐れるのか。
……その背景には、必ず「過去の傷」があるんですよ。
抑圧された経験、裏切られた記憶、奪われた何か。
「自由でありたい」という強迫観念は、実は「二度と傷つきたくない」という心の守りだったりする。
さあ、あなたの物語を始めよう
混沌中庸の「ルールに縛られない生き方」は、物語の主人公として最高の素質です。
周囲から「協調性がない」「自分勝手だ」と言われてきたかもしれない。
でも、その「従わない勇気」があるからこそ、誰も踏み込めない領域に足を踏み入れられる。
混沌中庸の「予測不可能さ」は欠点ではなく、唯一無二の個性なんですよ。
物混沌中庸は誰の許可も必要としない。
「こういう展開はダメだ」というルールも、「主人公はこうあるべき」という型も、全部無視していい。
……いや、無視しなければ嘘でしょう。
混沌中庸らしい物語とは、既存の枠を壊すところから始まるんですから。
ただ一つだけ、覚えておいてほしい。自由には常に代償が伴うということを。