短期外部資格

一週間ぶりにRACAへ来ると、受付にいた女性は、こちらが名乗るのを聞いてすぐに帳面を開いた。
「ミセリコルデさんですね。ロザリン部門長との面会でよろしいですか?」
「ええ。お願いいたします」

最初の頃は、名前を告げて、帳面を確かめてもらってから用件を訊かれた。
いつからか順番が一つ減っていた。

予定を照合し、来館理由を確認し、帳面へ記入する。
棚から一時証を取り出し、番号を確かめてから、こちらへ差し出した。
「お待たせいたしました。こちらをお願いします」
「ありがとうございます」

受け取った札を留める。金具はいつもの硬さで開き、指を離すと元の位置へ戻った。

最初に来た頃より早い。
案内について歩く。曲がる場所は、もう覚えている。


扉を叩くと、すぐに返事があった。
「どうぞ」

中へ入ると、ロザリンさんは机の上に広げていた紙をまとめて端へ寄せた。
「こんにちは。今日は早かったね」
「受付の方が、もう用件をご存じでしたので」
「やっぱり。最近よく来てるものね」

椅子を勧められる。
鞄を膝へ置き、いつもの紙を取り出した。

前回から一週間。これまでより長く空けたが、確認する項目は変えない。

「この一週間で、頭痛はありましたか」
「ないよ」
「眠りにくかった日は」
「なかったと思う。夜中に一回起きた日はあったけど、水を飲んだらすぐ寝たよ」

日付を訊く。
ロザリンさんは考えてから答えた。
見え方や距離感についても、前回から変化はなかった。
念のため、いくつか順番を入れ替えて訊く。答えは変わらない。

紙へ印を付ける。
一週間空けても問題はなさそうだった。次もこの間隔でよいだろう。

「では、次回も一週間後で構いません」
「うん」
ロザリンさんは机の端に置いていた予定表を引き寄せた。
「同じ曜日でいい?」
「ええ。今日の時間で問題ありません」
「じゃあ、空けておくね」
予定表へ何か書き込む。

こちらも日付を記して、紙を閉じた。
鞄へ戻そうとしたところで、ロゼさんが言った。

「そういえば、受付もだいぶ慣れたでしょ?」
「ええ。今日は名前を申し上げただけで、ロザリンさんとの面会だと分かっていただけました」
「やっぱり」
ロザリンさんは頷いた。

「最初の頃、毎回説明してたもんね」
「それに比べれば、ずいぶん早くなりました」
「よかった」

紙を鞄へ収める。
席を立とうとした。

「あ、そうだ」
ロザリンさんが机の引き出しを開けた。
「これだけお願いしていい?」

差し出されたのは、一枚ではなかった。数枚が角を揃えて重ねてある。

受け取って、一枚目を見る。短期外部資格。
見出しの下には、すでに文字が並んでいた。
現用名義の欄には、ミセリコルデ。
申請部門には警備部門。その下にロザリンさんの氏名がある。
来館理由にも記載があり、定期的な面会と治療後の状態確認について簡潔にまとめられていた。
次の紙へ送る。記入済みの欄が続く。
空いているところは多くない。


「これは?」
「毎回来館証を出してもらうの、面倒でしょ?」

一枚目へ目を戻した。今日の受付を思い返す。

「受付の方は、もうかなり慣れていらっしゃるようですが」
「でも、手続きは毎回あるじゃない」
「それは、そうですね」
「来週も来るんだし。これなら毎回同じことしなくて済むよ」

雇用や勤務を定める欄は見当たらない。
「これを取得すると、RACAの職員になるわけではありませんね」
「ならないよ」
ロザリンさんはすぐに答えた。

「入るときの手続きが簡単になるだけ。今みたいに、そのたびに一時証を出してもらわなくてよくなるの」
「なるほど」

今の手続きで困っているわけではない。
けれど、勤務が生じるものでもないらしい。ここまで記入が済んでいるなら、断るほどの理由もなかった。

最後の用紙に、本人記入欄が残っている。

「こちらを書けばよろしいのですか」
「うん。そこだけ」

机の上に紙を置く。ロザリンさんがペンを一本寄せた。

記入する項目は少なかった。現用名義の欄へ、改めてミセリコルデと書く。
続けて必要な箇所を埋める。

最後に署名する。

「これで?」
「大丈夫」

ロザリンさんが受け取った。上から順に確かめ、数枚の端を揃える。

「ありがとう。あとはこっちで出しておくから」
「お願いいたします」

ロザリンさんはそれを机の脇へ置いた。
「そうだ。帰り、図書館寄る?」
「今日は寄りません。別の用事がありますので」
「そっか」
「次回は一週間後に」
「うん。また来週」

鞄を持って部屋を出た。


受付まで戻る。
先ほどとは別の職員が座っていた。

一時証の金具へ指を掛ける。もう手元を見なくても外せた。

「ありがとうございました」
「はい。お疲れさまでした」

職員は番号を確かめ、札を棚の元の位置へ戻した。